第68話
「千捺、行くぞ」
「今日はどの辺り?」
「落ち着ける場所」
ブランチを済ませるとこんな感じで昴さんは私を街へと誘い出してくれるようになった。
「先週見つけた本屋さん?」
「扱ってる本、全部英語だって文句言ってただろ」
「でも雰囲気が素敵だった」
街並を眺めながら、彼に手を引かれてぶらぶらと歩く。
最近気付いたことと言えば、昴さんがオフの時に愛用するのはターコイズブルーの手袋だ。
おそらく一番のお気に入りなんだと思う。
だから私もそれに習って、アプリコットのグローブをチョイスする。
「いい匂いがするな」
「あの店かも」
パン屋にデリカテッセン、花屋や墓地。
目につく場所を興味深気に彼と立ち寄って、この街の白地図をふたりで塗り潰して行く。
ロンドンに来てからずっと昴さんと一緒。
しばらくぶりに彼を独占できて嬉しいのだ。
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