15 ふたりきりの世界

第67話

3月の初旬。



当初の予定よりも2週間ほど早くにロンドンへと旅立つことになった。



これは私が海外生活が初めてなことと、転勤してすぐに馴染めぬ環境の中、家にひとり残されてしまう私を彼が危惧したからだ。



昴さんは有休消化を利用して、赴任先の仕事に就くまでの3週間を私と一緒に転居先でのんびりと過ごすようにと計画してくれたのだ。




王立ガーデンの近くにある住宅街は、みんな同じような面構えの2階建ての庭付き一軒屋が並んでいる。



道路側に面した小さな芝生の庭を眺めるリビングの窓辺は、半円形に迫り出していて、いかにもロンドン家屋と言う感じ。



掃除業者に頼んでいたから屋内はピカピカで、荷物や新しい家具も業者に運び込んで貰ったから、とても楽な引っ越し作業だった。



ロンドン初日は、まずご近所さんへの挨拶まわりに昴さんと出掛けて、おすすめのショップや食料品店などの情報収集に務めた。



ルイス先生のレッスンの成果を見せようと頑張ったけれど、本場のイギリス人相手には四苦八苦で、挨拶のほとんどを彼に任せてしまう。



右隣のハミルトン夫妻は、お茶の時間だからとアフタヌーンティーを振る舞って下さった。



気ままな隠とん暮しをしている初老夫婦はとてもチャーミングで、仲良くして行けそうで安心する。




そんな感じでロンドンの生活を昴さんとふたりでスタートした。

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