第59話

しばらくして彼女たちと別れた私たちは、除夜の鐘をつきにお寺へと向かう。



「あいつら、バスケ部のマネージャーだったんだ。OB会にも転勤続きで出れなかったから6年ぶりかな」



懐かしそうに語る彼の顔を見上げても、その表情に曇りも後ろめたさもなさそうだ。



ボーイッシュさんは彼の一年先輩の千堂さん。



そして令嬢風の人は同級生の阿部さん。



さっきの昴さんとの会話の中で、彼女たちがまだ独身だと知った。



結婚式後の2次会で、当時のマネージャーと昴さんが交際していたことを彼の仲間から聞かされている。



きっと阿部さんがその彼女だったんだと、私の勘が働く。



「行けばいいのに」



私の中の天の邪鬼な部分が顔を出す。



「千捺も一緒なら考えるけど」



「それは無理」



「どうせ過去のことだから言うけど、阿部とは当時付き合ってた。もう10年以上も昔のことだし、懐かしいって気持ち以外の感情はない。だから変に勘ぐるな」



私の頭の中がダダ漏れだと言わんばかりに、呆れ顔で見下げる昴さんが憎らしい。



「私、誰かと付き合ったり別れたりの経験がないから、わかんないんです。だから、ごめんなさい」



「不安に思うなら僕に聞けばいい。確かに付き合ってる時は相手に真剣だし惚れてもいるし、大人になってからは将来を考えたことだってある。恋愛してたら、それが自然なことなんだ」



「結婚、考えたことも?」



正直に話してくれる彼の言葉は、時にナイフのようだと思う。

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