第58話
近所の神社での参拝を済ませて人込みに流されながら、長い参道を彼に手をひかれて歩いていると、綺麗なアラサー女性がふたり近付いて来た。
「やっぱり西院だ。こっちに帰ってたんだ」
「ああ、春にはまた海外だけどな」
「ねぇねぇ。明後日、高校の仲間うちで集まるから顔出してよ」
背が高くボーイッシュな美人さんとどこぞの令嬢風の清楚な女性が、嬉しそうに昴さんを囲み喋っている。
若返ったように「お前らうるさい」と悪態を付きながらも楽しそうな彼を、私は静観することしかできない。
「あら、もしかして彼女?」
ボーイッシュな美人さんがようやく私に気付いたように視線を合わせて来た。
ううん、彼女たちが昴さんに近付いた時から私の存在に気付いていたのに、今まで無視してたことくらいわかっている。
「いや、僕の奥さん。11月に結婚したんだ」
令嬢風の女性が微かに顔を曇らせたのを、私は見逃さなかった。
ボーイッシュさんは驚き顔を一瞬で笑顔に変えて「うわぁ、おめでとう」とバシバシと彼の背中を叩いた。
その後、明後日の集まりへの参加を何度もお願いされたけど、昴さんは適当に流していた。
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