第57話

表舞台の旅館の仕事の合間に、由香里さんやお義母さんが代わる代わるに顔を出して、私に掃除や正月の飾り付けの仕方を教えてくれる。



昴さんが鴨居や天井の埃をハタキで落し、その後ろを追い掛けるように掃除機をかけてたり雑巾で拭いたりする。



冬の掛け軸から新春のものへと掛け変えたり、玄関先に松竹梅を配置したり、お鏡餅を飾ったりとすべてが物珍しくて楽しい。



その日の夕食は、予め父からレシピを貰っていたトマト風味のシェパーズパイと温野菜のスープを作った。



お義父さんもお義母さんも久々に食べる洋食だと喜んでくれたので、ホッとした。



翌日は早朝から由香里さんの指導のもと、おせち作りを手伝い慌ただしく大みそかを過ごし、年明けが迫る時刻に昴さんと初詣に出かけた。




「今年は千捺が居てくれたから、母さんたちも楽できたって感謝してた。ありがとな」



「こちらこそ。お義母さんもお義姉さんも遠慮がなくて容赦ないから、返ってやり易かったから」



腫れ物に触るような扱いよりも、むしろ清々しく感じた。



お陰で色んなことを体験できたし、気付く事も多かった。



何より昴さんの妻として、西院の家族として受け入れて貰えたことが嬉しかったのだ。

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