13 嫁としての彼の郷里
第56話
昴さんの仕事納めの翌日から、地方にある彼の実家へと向かった。
都心から新幹線と在来線を乗り継いで2時間程度で到着できる温泉街は、結構人気で有名な場所だ。
彼の兄夫婦が跡取り予定の老舗旅館は、年末年始と言えどセレブレティな宿泊客で満室状態。
旅館の表舞台で忙しく働くご両親やお義兄さん夫婦に代わって、裏の母家での正月準備をする為に私たちはここへやって来たのだ。
「千捺さん、お帰りなさい」
結婚したと言っても彼の実家に来るのは、今日で4回目。
お姑さんがにこやかに「お帰り」と出迎えてくれたことに、このうちの嫁になったんだなと実感する。
普段は私の実家が近いせいもあり、小柴ファミリーとの付き合いが多くて忘れがちだけど、自分はもう西院家のひとりなのだ。
ちなみに千晴家族は所謂マスオファミリーだから、姓は輝政さんの加賀だ。
「今年は予約が一杯で奥のことに手が回らなくて、新婚さんなのに無理を言ってごめんなさいね」
「私、おせちとか初めてなんで宜しく伝授願います」
私の実家は客商売と言っても、ビジネス街の恩恵に与ってる店だけにお盆や年末年始は普通にお休みで、家族揃って温泉やリゾートなんかに出掛けてしまうから、おせちやお餅を用意してお正月を家で迎えるなんてことは、一度として経験したことがない。
だから私にとっては、初めてのことばかりなのだ。
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