11 日常の始まり

第49話

ラズベリー色のブラとショーツを手洗いして、窓を開けたバスルーム内に干す。



地上7階のベランダですら干すのを躊躇ってしまうそれは、旦那さまをいつも以上に発情させる恐ろしい物だと昨夜思い知った。



私の実家から帰宅してすぐに、彼はリビングのラグの上に私を寝転ばすと、厚手のワンピースの上から焦らすように掌でなぞった。



すぐに輪郭を現した胸のそれを、彼はあろうことか洋服越しに口に含み味わいだしたのだ。



ウール地はすぐに彼の唾液でじわりと濡れて、ラズベリー色の薄過ぎる下着を通り越して私の肌へと届く。



新品のワンピを明日クリーニングに出さなければならない状況になってしまったことよりも、直に彼を感じることができないもどかしさに悩

まされる。



「どうして欲しい」



昴さんは時々、とっても意地悪だ。



けれどこれは、初夜に交わした求め合うことへの大切な確認。



「ベッドに行きたい」



「そこで何したい」



ほら、凄く意地悪だ。



言葉で伝えることの方が恥ずかしいから、私は震える唇を彼のそれに押し付けた。



「可愛いおねだりに応えないとな」



身を起こしながら自分のシャツのボタンをといて行く彼は、余った右手を私の左手に繋げると、勢い良く引き上げられて立たされた。



彼は器用に片手でシャツを剥ぎながら、リビングの電気を落として寝室へと続く廊下のフットライトのスイッチを入れる。



寝室の扉を開け放ったまま、鈍く差し込む廊下の光源だけを頼りに彼は自分の衣類と私の洋服を脱がして、ベッドへと誘った。

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