第48話

みんなでフグ鍋を囲み、帰りに父や智充さんからジップロックの容器に詰め込まれた当面の夕飯料理を持たされて家路に着いた。



「しばらくはレストラン小柴のうまい晩飯が食えるな」



本職シェフの父や智充さんが作ったものから比べれば、私の料理は3流以下だ。



昨日、初めて私の手料理を口にした昴さんが意地悪に見つめてくる。



「だって、あれは」



鍋の底が焦げ付いた苦いカレーと味付けを忘れたポテトサラダは、確かに酷いものだった。



けれど料理中に何度も背後から私の身体に悪戯してきた、彼の責任でもある。



「料理で思い出したけど、平日の朝はなるべく軽く済ませたいんだ。だから明日は美味しいカプチーノとビスコッティを用意してくれたらいい」



さらりと会話を反らされて、私は再び頬を膨らませそっぽを向く。



そんな私の手をひいて、彼はクスクスと楽しそうに駅からの道をゆっくりと歩く。



きっと仲の良い恋人のように、周りには見えているのだろうか。



満たされるようなふわふわとした幸福に包まれるように、私は背の高い彼の横顔を見上げる。



穏やかに優しい眼差しを向けてくれる彼の存在こそが、この気持ちの答えなんだろう。




昴さんとずっと離れず密に過ごした2週間。



まさにハネムーンを体感した日々。



彼と結婚して良かったと、じんわりと実感した瞬間だった。

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