10 実家と新婚さん

第45話

新居のマンションは私の実家の5つ先の駅。



途中の3つ目は、昴さんの会社に近い駅だ。



濃紺のワンピを着てストールを首に回し、胸元を隠すように両端の生地を垂らして、ミラノで購入したコートを昴さんとお揃いで羽織ると、電車に乗って実家へと向かった。



ビジネス街の外れにある実家の店鋪は、日曜日の今日が休業日だ。



裏の階段から2階に上がって顔を出すと、待ち構えていたように両親と姉家族がリビングに集結していた。



「まあ、コートがペアなんて素敵じゃない」



「凄い、これカシミヤじゃん。手袋ももしかしてお揃い?」



脱いだコートとサーモンピンクの手袋を受け取りながら、母と千晴が照れて俯く私の顔を覗き込む。



「千捺、ここ暖房きいてるから、ストールもとっとけば?」



3歳の海くんを抱っこした千香の提案に、ぴくんと肩が上下してしまう。



「千捺さん今朝から風邪気味なんですよ」



首元で乱れたストールを正すように昴さんの手が伸びて来る。



紳士的に映る光景だろうけれど、垂れたストールを撫でるように胸元へと掌を滑らせたことで、私の身体が反応してしまう。



「ホントだ、顔が赤いな。千捺ちゃんの好きなココアすぐ作ってやるからな」



7歳の空ちゃんと遊んでいた智充さんが足早にキッチンへと消えて行く。



昴さんはやんわりと私の腰に手を添えてクスクスと笑いながら、両親に向かい合うソファへと誘った。

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