第44話

箱の中にはイタリアのラペルラで買った、人生初の高級下着。



大人し目と言っても、かなりセクシーなブラとショーツのセットが3組みとスリーインワンにアプリコット色のエレガントなナイティが一着。



友人の園子に買って来てと頼まれてお店に行ったのはいいけれど、あまりにも官能的なデザインの多さに赤面してしまったのだ。



昴さんをお店の外に追い出そうと頑張ったけれど、彼と店員さんに言い包められてあれやこれやと試着させられた後、買って貰ったものだ。



園子がリクエストした赤の総レースの下着セットよりかは控えめだけれど、私にはハードルが高過ぎる。



下着専用の引き出しの一番奥にそれらを押し込んでいると、寝室にやって来た昴さんが、ラズベリー色のブラをひょいと持ち上げる。



「明日、コレ着けて千捺の実家に行こうか」



よりにもよって、一番セクシーで大事な部分が透けているヤツだ。



常識で考えても外出用のものではないし、洋服の上からヌードなラインが絶対出るはずだ。



「無理」



「ウールのワンピース持ってるだろ。心配ならストールをかけたらいい」



彼はクローゼットを開けると、母が嫁入りに用意してくれた白い襟が清楚な濃紺のワンピを取り出して、ミラノで買ったオフホワイトのストールをコーデする。



どうしてもこの下着で行かせたいらしい。



「やだ」



「指輪選ぶ時に言っただろ、簞笥の肥やしにするなって。これも一緒。わかった?、僕の可愛い奥さん」



そう呼ぶことで、私がホントは嬉しいと感じていることに気付いているであろう彼は、確信犯で意地悪だ。




その日の夜は、水曜日はアプリコットのナイティを着て欲しいだとか、土曜日は総レースのチョコ色を着けてだとか、そんな注文をベッドの中で取り付けられてしまった。



おそらく私はそのお願い通りに彼に従ってしまうんだろう。



私の中で、彼に抗う気持ちなんてとうになくなってしまっているのだから。

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