第38話

新婚旅行も折り返しとなった6日目、私たちはパリに到着した。



買い込んだイタリアでの衣類等やお土産の荷物はDHLで日本に送ってしまったから、彼のビジネスタイプのスーツケースと私の大きなスーツケースだけだから身軽な方だろう。



荷物をホテルに置いて、近くの蚤の市に早速出かける。



アンティークやユーズドと言うものに関心のない私は、昴さんが手に取った大振りのカットグラスをぼんやりと眺めていた。



「年代もののバカラか。千捺、ちょっとバカラに行ってみよう」



そんな一言で、蚤の市から飛び出すとタクシーに乗ってバカラのショップへと移動する。



彼はカットグラスをいくつかチョイスすると、何度も手に持って感触を確かめている。



ウイスキーをロックで頂く時に使うようなどっしりとした風格のグラスは、キラキラと煌めいて宝石のようだ。



「これ、僕の湯飲みにしようと思うんだ」



「これをですか?」



「淵が分厚いから丈夫そうだし、ロックグラスで使うより湯飲みっぽいだろ」



湯飲みっぽいとは感じないけれど、少年のように嬉しそうに語る彼を可愛いと思った。

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