第37話

海外転勤族である彼の元へと嫁ぐ為に家具や電化製品について相談した時には、足りない物は転勤族仲間の同僚から譲り受けると言うものだった。



花嫁道具を用意して持ち込んだとしても、数ヵ月後には私の実家に運んで眠らせることになるから無駄と言うことだ。



これには買う気満々のうちの両親が反対したけれど、ロンドン勤務を終えてからきちんと新居を構えるその時に購入すると言う話しでおさまった。



ローマでは初日に手袋を大人買いしたけれど、観光メインだったからその後に大した買い物はしなかった。



けれどミラノに着いてからは、洋服だけに留まらず革靴やブーツ、パーティバッグなんかを買ってくれるのだ。



「パーティは妻に対する夫の甲斐性も試される場でもある。だからこれくらい普通のことだ」



そう告げられると、自分でも日本で用意した物があるにも関わらず、彼と一緒にコーデした衣類や鞄や靴を拒むことなんて出来ない。



結局、今日も淡いグレーのカシミアコートをお揃いで購入してお店を出る。



もちろん昴さんとはデザインや装飾が違うけれど、色目と素材を合わせたコートはウインドウに飾られているペアのものよりも、ハイセンスで大人の渋さを感じさせた。



こんな調子で明日からのフランス旅行も大丈夫なのかと不安になる私は、やはり庶民なのだろうか。

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