08 彼の価値観
第36話
観光名所と呼べる場所をじっくりと巡った3日間のローマ観光を終えると、今度はミラノに飛んだ。
12月を迎えた街並みはローマよりもクリスマスムード一色で、ショーウインドーの飾り付けもイルミネーションも素敵。
有名ブランドだけでなく、街角にあるショップにも立ち寄りながら、私は溜め息をついた。
「このコート、千捺に似合うんじゃないかな。袖を通してごらん」
こんな風に昴さんは自分のコートを選び終わると、私の物まで勧めて来るのにも慣れてしまった。
ブランドの名前にこだわらず、品質が良い物を吟味して選ぶ彼はもちろん価格になんてこだわらない。
それが高かろうと、安かろうと。
何より大切にしているのは、自分がこれだと言うフィーリングだ。
口癖のように「気に入ったものは、いつまでも大事にできるから」と言う。
確かにそうかもしれないけれど、私の分まで支払う彼に少々の劣等感が募ってしまう。
両親や姉夫婦からお小遣いだと渡されたお金には手を付けずに、自分の貯金から少なからずの資金を持ち込んでいたのだけれど、たったの10ユーロですら減らない財布の中身。
だからと言って、彼が散財家と言う訳でもない
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