第31話

ヒースローでトランジットしてから到着したのは、夜の8時を過ぎたローマ。



ホテルへと向かうタクシーの窓から眺める景色は、フォロロマーノもコロッセオもオレンジ色に照らしだされて幻想的で、少し怖く感じた。



「念願のローマはいかがですか、僕の可愛い奥さん」



彼は新婚初日の今朝から、こんな風に私をからかい半分で呼ぶようになっている。



CAの人にチラリと微笑まれたことを恥ずかしく思っている私は、くすぐったいような喜びを感じているのにもかかわらず、頬を膨らませてそっぽを向く。



それを見て、彼はまたクスクスと笑いながら、私の肩を抱き寄せてくれる。



今までは穏やかで優しいけれど、どこかクールな大人だと思っていた昴さんが、こんなにも笑う人だとは知らなかった。



それは私にも気を許して認めくれているようにも感じられるから、自然と私も自分を出してしまえるのだ。

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