07 新婚旅行

第30話

翌朝、私が目覚めると昴さんはすでに着替え始めていた。



昨夜の気恥ずかしさを思い出し、ベッドから抜け出すタイミングをはかっている私に気付いた彼は、そっと近付くと躊躇いもなくキスをくれる。



「朝食に行きたいから、早く顔洗って来い」



爽やかなミントの味を残した舌先に、すでに彼が歯磨きを終えた事を感じて、あわててパウダールームへと駆け込んだ。




ホテルをチェックアウトして、私たちは空港へ向かい機上の人となった。



昴さんは出張で貯まったマイレージを利用して座席をグレードアップしてくれたお陰で、人生初のファーストクラス。



激安ツアーのエコノミーしか知らない私は、広々とくつろげるシートと美味しい料理や行き届いたサービスの一つひとつへ過敏に反応してしまう。



そんな私を観察しながら、「こんなに退屈しないフライトは初めてだ」と軽やかに声をたてて彼は笑った。

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