第32話

ローマ近郊のホテルに着くと、昨夜のように緊張することもなく、ふたりで倒れ込むようにベッドに沈んで長いキスの後に眠り込んだ。



翌朝の9時過ぎに、揺り起こされるまで目覚めなかった私は完璧に時差ぼけになっていた。



「ほら、ローマの休日巡りするんだろ」



「まだ眠い」



「バスタブにお湯入れてあるから、スッキリして来い。体内時計をこっちに合わせないと、明日も辛いぞ」



海外に行き慣れている昴さんは時差ぼけ知らずなのか克服しているのか、私がお風呂と身支度を済ませるまでの間、ホテル近くを散歩すると言って出かけて行った。



昨日から同じ空間に一緒にいることが当たり前になっていたからか、私はひとり残されたことに淋しくなる。



妙に高い部屋の天井も窓から見えるローマの風景も、彼と昨夜目にした時には「さすがヨーロッパ」と喜んでいたのに、ひとりだと味けない。



うっかり寝転べは溺れてしまうような横長のバスタブに三角座りして、時差ぼけよりも弱くなっている心を洗い流そうとシャワーを捻った。

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