第28話
「僕は結婚を急いでいたけど、誰でも良かった訳じゃない。実際、杉谷さん以外の人からもお見合い相手を何人も紹介して貰ってたんだ」
「そうなんですか?」
「帰国してからの土日は見合いで埋まってて、色んな女性と引き合せて貰ったけど、時間の無駄かなって思い始めてたんだ。でも千捺に会った瞬間にフィーリングが合うってわかった。ヒトも動物だから生理的な拒絶だとか相性みたいな直感が働くんだよ」
私にはそんな直感は皆無だった。
最初のお見合い相手だった人の時のような負の感情はなかったから、どこかホッとしていたくらい。
「きっと千捺にも無意識にそんな本能が働いていたはずだ。それに今日キスして確信した」
「何をですか」
「僕とのキス、嫌じゃなかっただろ」
確かに恥ずかしかったけど、嫌じゃなかった。
初めて知るキスの感触に酔ってしまいそうだった。
「はい」
むしろ、悦びを感じてしまった。
それがキスと言う行為ができたからなのか、相手が彼だったからなのか。
「仕事と結婚準備を優先して話し合うことも形式的なことばかりだったけど、これからは違う。ちゃんと思ってることを伝えあっていきたいし、セックスも求め合える関係になりたい」
こんな風に彼が心のうちを語ってくれたのは、初めてだった。
「私も、そうなりたいです」
「だったら、そうなるまで少しずつ進んで行けばいい。まずはキスや隣で寝ることに慣れればいい」
そう告げられて、私たちは広いベッドに向き合うように寝転んだ。
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