第22話

披露宴会場の約7割は、昴さんの会社関係の人達で埋まっている。



彼の妻として少なからず関わって行く人達だからと、緊張しながらも失礼のないように笑顔で挨拶を交わすことに神経を集中して挑んだ。



「千捺さん、お酌されても口を付けるふりだけでいいから」



衣裳替えのない私たちはずっと高砂に座り続けている。



進行の合間を縫って、次々とワインやビールを片手に彼の会社の人達が押し寄せて来るので、馬鹿正直に相手をしていた私はかなり酔っていた。



「はい」



「かなり辛そうだね」



彼は私の横にピタリと椅子を密着させて座り直すと、腕を回して私の肩を抱き寄せた。



普通ならびっくりして距離をとろうとする私だけれど、彼の肩に頭を乗せて寄り掛かってしまうほど、お酒の威力に負けてしまっている。



酔っ払いの花嫁なんて、なんて恥さらしだろうかと反省しつつも、凭れ掛かる初めての心地よさに胸をふるわせた。



「昴さん、ごめんなさい」



「かまわない。少し楽にしてればいい」



お偉方からのアプローチは済んでいるからと説明されて、姿勢はそのままに彼の同僚や友人になんとか会釈を返した。



「おい、西院。こんな可愛い嫁さん貰ってデレデレじゃないか」



「ここまであてられるなんて、思ってなかったぞ」



「こんなに甘えてる千捺、初めて見たよ。ごちそうさま」



私の醜態は結果的に昴さんのフォローのお陰で、列席者には甘いムードの新郎新婦に映ったようで安堵する。

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