04 結婚へのカウントダウン

第13話

一応、結婚を前提でのお付き合いがスタートした。



ってことは、私にとっての初彼は昴さんと言うことになるんだろう。



あまり実感はないけれど、それなりに嬉しいと感じる。



杉谷さんにそのことを報告すると、とても喜んでくれた。



本格的な交際が始まったと言っても、昴さんは国内外の出張が多くて、それからの2ヵ月間に会えたのは、たったの3回。



そのうちの2回は、挨拶を兼ねてお互いの実家へと足を運んだものでデートらしきものではなかった。



『まず相手の家族を知っておくべきだと思うんだ。結婚は当事者だけの問題じゃないから』



彼の言う通り、相手の両親が受け入れるかどうか、そして私自身が逆に受け入れられるかの問題が大きい。



無名の女子短大を出て、就職もできずに実家を手伝っている私をどう評価するのだろうかとドキドキで彼の実家に向かった。



『世間ずれしてなくて可愛いお嬢さんじゃないの。昴はあれこれ指図されるのを嫌う子だから、千捺さんみたいな若い人の方が母さんも安心よ』



老舗旅館の大女将らしからぬ陽気で快活な昴さんのお母さんに、緊張で固まる身体が解れたように感じた。



彼のお兄さん夫婦にも紹介して貰って、結納や結婚式の日取りまで話題に上り、少し焦ってしまう。



『親父、それは千捺さんのご両親とも相談してからだから』



昴さんや彼のご家族も、あくまでも結婚前提で交際をスタートさせたばかりの段階なのに、すでに結婚は決定だと言う雰囲気の流れで私は戸惑うばかりだった。



うちの家族も昴さんを気に入ったようで、彼の実家と同じような流れになって、お見合いとはこんなにも結婚へ一直線に進んで行くものなんだと痛感した。



互いのことを理解したりする時間はないけれど、穏やかで誠実な大人の彼といると安心できる自分がいて、結婚を決断するには申し分ないと感じ始めてもいる。

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