03 三度目の正直

第9話

「こちら、西院昴さん。千捺ちゃんより8つ年上の29歳。春にニューヨーク勤務を終えて戻って来たばかりの海外企画開発部のエース。彼、海外支社を点々としているから、今まで良い御縁がなかったのよ」



杉谷さんがイチオシだと言って勧められた彼は、海外にも多くの支社を持つ大企業の商社に勤める大人の男性だった。



何より直視できない程に格好よくて、お見合いに現れることすら信じられないくらいだ。



眼力の強い切れ長の双眼が彼の印象を冷たく見せるけれど、口調が穏やかで、安心した。



地方にあるご実家の稼業は老舗旅館で、お兄さんが跡を継ぐ予定。



彼はそこの次男坊だと言うから、同居の心配もない。



仕事柄転勤や出張も多く、来年にはまた海外勤務になるかもしれず、出来れば今のうちに身を固めようと考えているらしい。



つまりは誰かを好きになって恋愛している暇はない、と言うこと。



それは私にとっても好都合な条件だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る