第3話

2番目の姉、千晴もまたある意味で一途な女だ。



大学2年の冬から付き合いだした彼は、浮気症の男だった。



何度も別れる別れないを繰り返し、その度にその男は土下座して千晴に詫びるのだ。



結局3年後、その男は別の女を孕ませて千晴と別れざるをえなくなった。



そんな別れだったからこそ、千晴は未練を残したのかもしれない。



半ばヤケクソのようにお見合いして出会った、4歳年上のサラリーマンの加賀輝政さんと結婚して今は幸せそうにうちの3階で暮らしている。



けれど年に2度だけ、千晴は子供を旦那や両親に任せて、大学の同窓会だと言って出掛けて行き、翌朝に帰って来る。



そして家族に配られる手土産の和菓子。



それはあの浮気症だった男が働く店の物だと、私だけが知っている。



千晴が交際当時、何度かその店に私を連れて行ったからだ。



もしかしたら、千晴はまだその男と関係があるのかもしれない。

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