第16話 爆音の下で詠まれる詩

ある日

外から閃光が見え

轟音が上空を取り巻き

わたしは咄嗟に

ペンとノートと懐中電灯を手にして

床下に潜った


わたしは

息をひそめながら

震える手で

ノートにペンを走らせる


<今日もご機嫌な 青空に

ひとことわたしは 御礼を言い

ミルクを一杯 コップに注ぎ

ラジオを付けて ボリュームを上げ

ミルクをひといき 飲みくだす

お腹から広がる 温かさ

滋養が四肢に 行きわたる>


途端に

爆音が響き渡り

それは徐々に

こちらに近づいてくる

振動が背中を打ちつけ

狂ったように拍動する心臓を自覚し

息を荒げながら

なおもわたしは

ペンを走らせる


<草の陰から バッタがひょい

芝に撒かれた 朝露が

太陽の光を 乱反射

キンモクセイの 香りを吸って

肺を充満させてみると

過ぎる言葉は

幸福>


振動が徐々に

その強さを増していく

間もなく閃光は

ここにもおよぶだろう


——死にたくない

——死にたくない

——死ぬのは嫌だ

——死ぬのは嫌だ


わたしは

うわ言のように呟きながら

覚悟よりも何よりも

書き続ける


<美と大地と

 それ以外に何を……

 人間は……>

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