第13話 真実猫と資本主義
都市の真ん中で
真実猫を胸ポケットに忍ばせ
散歩をしていると
巨大なクレーン車が
鉄筋を吊り上げる様子が見えた
「またマンションができるんだな」
と僕は言う
「こんなに作ってどうするんだろう。人間は減っていくのにさ」
「資本主義とはそういうものだよ。新たに何かを創生しなければ成り立たないと思っている」
真実猫が
自らの足をぺろと舐める
「その営み事態に是非はないと思うけどね。ただ、それを創生と思い込んでいることが痛い。人間の、自然からの収奪は完了しているんだから。そこから先は、人間が勝手に作った勝手な価値観で勝手な付加価値を付けて、それに基づいて富があっち行ったりこっち行ったりしているだけだよ。本当は、何も変わっていないか、緩やかな衰退のフェーズ。受け入れるしかない」
「衰退は嫌だね」
「いやだねえ。出てくる飯が少なくなっていく。昨日の夕飯も、さわらが半切れだった」
「物価が高いんだよ」
「こうも空腹だと、隣家の猫の食べ物が欲しくなってくる。飢餓状態になったら、奪ってくるかもしれない」
「衰退を受け入れるんじゃないの?」
「あのねえ。今まさに空腹のやつにそんなこと言ったら、ぶん殴られるだけだよ」
「いろいろ矛盾してる」
「そりゃそうさ。生への志向は死への行進。相反する同義。この世はまことに矛盾そのものなり。さあ、わかったら、とりあえず資本にのまれて働いてくれ」
ぼくは家に帰ると
一年ぶりに求人広告に目を通した
隣家の猫と争われると
いろいろ面倒だから
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