歯がゆいこの気持ちはキミの肌に伝える

環流 虹向

今日も

何年も変わらない愛くるしい顔。


この顔を見るためだけに会いに来てるといっても過言じゃない。


けれど、愛想ない返事をしながら愛想笑いをする彼女はまたTVに夢中で俺に対しては興味をもたない。


まあ、会えるだけいいか。


レモンサワーで口を潤した彼女の唇に何度も気持ちを表した自分の唇を乗せる。


向こうからのキスは一度もない。


というより、最近会うための連絡は俺からばかり。


これはずっと一方通行で、いつか行き止まりが出てくる関係なのかもしれない。


だけど、今君は俺だけの女。


脱ぎ慣れている彼女は5秒もないうちに素肌だけに。


抵抗の言葉を知らないのかと思うけど、これは嫌がる。


顎先から鎖骨まで伸びた夜空みたいな黒髪を指先で避け、キス待ちの首筋に軽く歯を立てた。


「…いたい。」


「そんな痛くないでしょー。」


地味な抵抗を口にした彼女だけど、体では拒否せず俺の首に腕を回し抱きついた。


ああ、お互いの肌が擦れて心地がいい。


あとは彼女を自分のものに出来たら人生史上最高の日々を暮らせるけれど、彼女はその気があまりないらしい。


「好き。」


この言葉を伝えても、彼女は愛想のない生返事。


だから今までこの関係。


それでも何度か言ってみた。


けれど、彼女は同じ言葉を一度も口にしない。


それが彼女の答えなんだろうが、なんで今日も会ってくれたんだろう。


そのひとつの突っかかりが俺と彼女を繋げてくれてる理由。


会えなくなるよりはマシなんだからと、今日は唇をよく求める彼女へたくさんの愛を注ぐ。


そうすると彼女はいちばん機嫌がいい顔をするから、歯が浮く台詞を溢しそう。


潤んだ瞳の彼女と目が合い、タイミングはバッチリ。


けど、空に消える言葉を吐くくらいなら愛し合った感触がほしい。


俺は疼く歯を火照った彼女の肌に乗せて少し力をいれた。


それと同時に彼女の腕に力が入り、ぐっと引き寄せられる。


これが愛じゃないならなんなんだ。


彼女の熱で俺は溶けてベッドに体を投げると、同時に彼女は起き上がった。


「…おしっこ。」


俺の体から離れた彼女は赤ん坊の姿のまま、全てを出し切りにいった。


「…かわい。」


無防備な尻にまた歯を立てたくなった俺は汗をかいてるジンソーダで言葉を飲み込んだ。



歯がゆいこの気持ちはキミの肌に伝える/環流 虹向

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