転生世界はディストピア
秋月春暁
第1話 プロローグ
「はあっ、はあっ、はあっ…………」
俺は今、息を切らしながら暗い森の中を全力で駆けている。
オオカミの群れから逃げるため、必死に走っているのだ。
「なんなんだ、この世界……!? 普段からあんな大きなオオカミたちが、森の中をうろうろしているのか……!?」
野生のオオカミなんてもちろん見るのは初めてだが、あんなに大きなものだったとは……。
犬の仲間だから大したことはない、と軽く考えていたが、現在、俺を追ってきているオオカミたちは、下手をすれば成人した男性よりも大きいくらいだった。
遺跡探索に同行した冒険者仲間が、『ダイアウルフ』と言っていたが……。
『ダイアウルフ』って、もう何万年も前に絶滅したオオカミじゃなかったか?
そう思ったが、まさに今、実際に後ろから迫ってきている。
この世界には存在しているのだ。
しかも、何十匹も……。
オオカミの存在を教えてくれたその仲間は既にやられてしまって、もうこの場にはいない。
次は俺が……
そんな恐怖に怯えながらも必死に逃げてきた。
しかし、もともと体力があるわけでもない俺が、オオカミたちの持久力に敵うわけもなかった。
遂に追いつかれてしまい、群れの中の一匹が俺の
「ぐわぁあああーーーーーー!!」
足に激痛が走る。
痛みに耐えかねて、その場に倒れ込んでしまう。
そしてその場に倒れた俺に向かって、次々に別のオオカミたちが飛び掛かってくる。
「うわぁあああーーーーーー! 来るな! 来るな! 来るなぁあああああーーーーーー!!」
伸し掛かってきたオオカミたちは、その巨体ゆえにかなり体重があり、俺は必死に抵抗しようとするが抑え込まれてしまい動くこともできない。
「ガァアアアアアアーーーーーーーーー!」
オオカミは大きく口を開け、俺の目の前でその鋭い牙をむく。
そしてそのまま、俺は抵抗することもできず、そのオオカミに喉笛を掻き切られてしまったのだった。
そんなバカな!
オオカミごときにやられるのか!?
この世界に転生したばかりなのに、もう死んでしまうのか!?
そんなことにならないように女神様に願いを叶えてもらって、特別な能力をもらったんじゃなかったのか!?
異世界に転生して、これからドラゴンなどの魔物を退治して、この世界で有名になって成り上がっていくわけじゃなかったのか!?
どういうことなんだ……?
話が違うじゃないか……。
異世界転生と言ったら、チート能力で楽に人生を送れる……。
そんな話ばかりじゃないか。
そんな話、夢でしかなかったのか……?
薄れていく意識の中で、俺はこの世界に来ることとなった時のことを、まるで走馬灯でも見るかのように思い出していた……。
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