第7話 戦闘に加勢して、従魔契約をしたよ
この世界に降り立ってから約2ヶ月、あちこち回ったけど、この森には街も村も無いし、人が住んでた形跡も無かった。
生きてる人間はまだ見てないけど、だんだん人間の街に近づいている気がする。
早く料理されたものが食べたい!、塩味が欲しい!、人間居ないかなぁ。
西に行けば、街道とかあるかも知れないと思いながら走っていると、微かに川の流れる音が聞こえてきた。
それと共に金属の音も聞こえる。人間がいるのかな?キンキン鳴ってるから闘ってるのかも。
気になるので、近くに行ってみた。
「おん・・・よ!・・・もう・・・って!!」
「おれ・・・かまが・・・らって・・・!」
「そ・・・した・・・ま・・・きに・・・とお・・・よ!」
川の横の道で6人の茶色い男と、銀色の鎧を着た女の人が闘っている、6対1だ。
当然の事ながら何を言っているのかさっぱり判らない。
所々の発音だけ聞き取れる感じだ。
銀鎧の人はハーフプレートにガントレット、腰は金属製のスカート状の物と、内側に布のスカートを履いていて、持ってるのはロングソード?いや、両手持ちだからブロードソードかな?ぱっと見でだけど、業物かってくらいに、磨かれている。
腹筋が凄ぇシックスパックって言うんだっけ?
結構重そうなのに、重さを感じさせないくらいに軽々振っていて、鎧もガントレットも結構な重さがあるよね?なのにあの身のこなし、戦士なのか騎士なのか判らないけど、かっこいいね。
対して茶色い方は、ショートソードとバックラー、ナイフだけのもいれば短槍の人もいる。
着ているのは、こげ茶色の厚みのあるチョッキみたいな物、肩当が付いているのもいるし、レザーアーマーって奴か。
俺から見て、左側の10メートルくらい離れたところに、木の上から弓で狙ってる奴もいる。
もしかして、こいつら盗賊って奴らか?、こんな感じなんだな。
全体的に肌が日焼けしていて、汗でテカテカしてるのと、ズボンとかシャツとかが汚れてて汚いし、髪もぼさぼさだし、無精ひげもあるので、間違い無いだろう。
剣で闘ってるのなんて初めてみたので、ワクワクしながら見ていると、弓矢が銀鎧の左肩を貫いた。
やばい!?ピンチじゃないか!!
助ける義理なんてこれっぽっちも無いし、正直戦闘シーンなんて初めてだから、見てる方が面白い。
だが、判官びいきかな?、多勢に無勢で闘ってるのを見てると、加勢したくなってくる。
あの中に入るのは、正直言って怖いよ。
だって、魔獣はほぼ直線的にしか来ないけど、人間の方はフェイントも使ってくるし、狡猾だからね。
だが、みすみす見殺しにするのも気が引ける。
弓を持ってる奴の下にこっそり近づいて、男が乗ってる枝を確認してから、他の木を使って、三角飛びで背後から猫キックを使った。
ドゴッ!!・・・ドッ!ゴシャッ!
スキルで背中を蹴ったら、おおよそ猫の様な小動物が出す音では無い、凄い音がして6メートルくらい吹っ飛んで、一回バウンドしてから地面に転がった。
地面に転がった男は、腕の関節が増えてる様に見え、背中には丸い窪みがあり、背骨が折れている様にみえた。
突然背後から凄い音がして、驚いて振り向いた盗賊達が、地面に転がる仲間を見て何か喚きはじめた。
「な・・・!?だ・・・た!は・・・ふく・・・のか!?」
「やば・・・よ!せ・・・おれ・・・い・・・ぜ!」
銀鎧の人も驚いた顔をしていたが、木の枝に乗る俺と目が合った瞬間、表情がニヤリと好戦的な顔になり、混乱している盗賊の手前側にいた3人を片手に持った剣で、斬り伏せた。
「ミャ」『[鑑定]』
少し余裕ができたところで、鑑定してみたら、茶色い奴らの職業は盗賊と暗殺者だった。
ステータスの数値は、ザッと見た感じ、MP以外は2桁しか無かったので、割愛するよ。
銀色の方も見てみよう。
「ミャ」『[鑑定]』
名前:アーリア・モースケル 状態:重症・疲弊
職業:専属騎士
HP:120
MP:720
STR:163
VIT:70(+260)
AGI:120
INT:158
MAG:177
攻撃スキル:剣術
感知スキル:気配察知 殺気感知
耐性スキル:苦痛耐性
魔法:火魔法 自動回復 生活魔法
銀鎧の方は専属騎士という職業になっていて、状態は重傷・疲弊になっていた。
VITに補正値が付いているのが気にはなったが、今はそれどころではない。
銀鎧の騎士は、元々両手で持っていた剣を片手で振り回したせいか、振り抜いた剣の先が下がったのが見えた。
乗り掛かった舟だ、中途半端で放置するつもりも無いし、残りも加勢しようと思い、枝から飛び降りて、残りの3人に襲い掛かった。
盗賊の3人は、向かって来たのが小さい動物だった事に驚いた様子だったが、2人は馬鹿にした様な顔で鼻で笑い、脅威ではないと判断したのか銀鎧の方を向き、もう1人がニヤけた顔で、けん制しようと短槍を連続で突き出してきた。
シャッシャッシャッ
10m程度なら1秒かからないので、殆ど止まっている様に見える、突き出された槍を左に躱して、相手の右脇腹に右前足で猫パンチをお見舞いしてやった。
左に避けたのは、男の視線が右に振れたのを見たからだ。
「ミャ」『猫パンチ』
ドフッ!!
盗賊の右わき腹に、右前足がめり込み、肋骨に当たって折れた感触があった直後、フィギュアスケートのジャンプの様な
残りの盗賊を見てみると、動きが止まり、錐もみ状態で飛んで行く仲間を見て、目を見開いて驚いていて、銀鎧騎士の顔も、目が見開かれていて、驚いている様な表情をしていた。
銀鎧の持っている剣は、俺から見て左側の奴に向けていたので、右側の奴の背中に向けて、攻撃した。
「ミャ」『引っ掻き』
スパッ
何の抵抗も無く、盗賊の男は腹から上下に別れ、血を吹き出しながら倒れた。
左側の盗賊は、顎が外れそうなくらいに口を開けて、頭だけ右を向いて驚いていたが、銀鎧に
戦闘が終わり、銀鎧の女は片膝をつき、俯いて左肩に刺さった矢を右手で握り、歯を食いしばって一気に引き抜いた。
鏃の大きさは、幅2センチ、長さ3センチ程もあり、当然返しも付いているから、肩から血が飛び散った。
かっこいいな、それ!と思ったが、感心している場合では無い。
俺は騎士に近づき、荒い息をしている騎士の膝に前足を乗せ、初めて治療術を使った。
「ミャ」『[治療術]』
騎士は、驚いた顔をしながらも、痛みが和らぐのを待ってから立ち上がり、剣を鞘に納めると、俺に向かってコクリと頷き、まだ僅かに痛むであろう肩をグルグルと回しながら、背後に見える物体に向かって走りだした。
さっきは視界に入っていなかったが、40メートル程離れた場所に、馬車が横転しているのが見え、その周りにくすんだ銀色の防具を着た兵士らしき物体と、血まみれの盗賊の死体があった。
護衛の兵士かな?貴族の護衛ってところか、銀鎧は隊長って感じかもしれない。
馬車には馬が一頭だけ繋がっているが、尻に矢を受けて苦しんでいる様子だ。
馬なんて全然親しみが無かったなぁ、競馬もやらないし、どこかの観光地で見たのと、家の近所の乗馬クラブの馬くらいしか、実物を見た事が無い。
俺にとっては、馬と言えば馬刺し!好きなんだよね。
馬刺し食いたいなぁ・・・。
この状況で場違いかも知れないが、そう思った瞬間馬が急に暴れ始めた。
昔、TVで「馬は、人間の感情にとても敏感なんですよー」とか言ってた気がするが、今ので勘付かれた?かもしれない。
いや、食べないよ?デカ過ぎるし。
馬車に近づき、馬の顔が見える位置に行くと、口から泡を吹き、何かを訴える様な怯えた目でこっちを見てきたが、無視で良いだろう。
魔力感知では、馬車の中に二人いて、中で二人が話しているのが振動感知で判った。
倒れていた兵士は、戦闘が終わったと思ったのか、自分で回復魔法をかけて、起き上がった。
俺の知らない回復魔法だけど、治療術があるから、特に覚えたいとは思わない。
起き上がった兵士がこちらを見たが、状況が理解できていないのか、無害だと思われたのか、無視された。
馬車の方に近づくと、中からヒラヒラが付いた薄緑色のドレスを着た女が這い出てきて、直後に銀鎧も、回復魔法でも使ったのか、両手を使って、軽々と馬車から出てきた。
横転した馬車の上に立つ女は、俺を見つけると、目をキラキラさせてガン見してきた。
銀鎧は、馬車から飛び降りるとドレスの女が降りるのを手伝っていた。
そして、俺の前に膝をつき、ガントレットを外して、柔らかく微笑ながら手の平を上にして差し出してきて
「○△✕◎、か$%&▽□*、た○か&た。$△□¥う。」
俺は銀鎧の手に右前足を乗せた。
銀鎧が喋った内容は、聞いた事のない言語で、何を言っているのかさっぱり判らなかったが、何となくニュアンスで、さっきのお礼を言われていると感じた。
「ミャ」『どういたしまして』
答礼を言ったところで、彼女らには、鳴き声にしか聞こえていないだろう。
差し出された手に前足を乗せたら、銀鎧の魔力が俺の中に流れ込み、何かが繋がった気がした。
後ろにいたドレスの女が、手を顔の前で組みながら満面の笑顔でなんか喋りながら近づこうとしたが、鼻を衝く強烈な何かが臭い!
咄嗟に逃げた、鼻が曲がりそうなほどに強烈な臭いで、近づく事ができない。
『無理無理無理無理、臭い!目に染みる!!何だこれ!?香水の匂いでも、足の臭いでもないけど無理!』
「フシャー!」
しつこく追いかけて来ようとしたので、威嚇したら泣き始めてしまった。
ドレス女に向かって、威嚇したのを見て、兵士が剣を向けてきたが、銀鎧騎士が兵士と俺の間に立ち塞がり、攻撃の構えを見せた兵士を制止し、俺を両手で包むように抱き上げた。
何だこれ?、魔力が流れ込んでくる、俺の魔力と混ざり合い、何だか凄く暖かくて気持ちがいい。
が、それも長くは続かなかった。
銀鎧がドレス女の方に振り向いた途端、また強烈な臭いが襲ってきたのだ。
包み込む手をこじ開けようと、ジタバタ藻掻いてると、銀鎧が顔を覗き込み、苦笑いを浮かべて話しかけてきた。
「き%&¥○▽$お*@%#✕かい?」
何かを言われたが、知ったこっちゃないと手の中から飛び降りた。
地面に座り銀鎧の方を見ると、青白い紐の様な物が、繋がっていて、頭の中に【従魔契約を行いますか? YES/NO】という言葉が浮かんできた。
従魔契約?自動的に発動するの?条件はこの青白い紐の様な物なのかな?
俺との相性がいいのか、それとも、魔力が混ざり合った結果なのか判らないが、「YES」を選択した。
10秒くらいして、俺と銀鎧騎士の足元に青い魔法陣が煌めき、すぐに消えた。
「ミャ」『ステータス』
ステータスを確認すると、名前が入るだろう空欄の後に「対等」、すぐ下に「契約者:アーリア・モースケル」と書いてあり、更に魔法に言語理解というのが増えていた。
何て呼ぼうか、一瞬考えたが、あるじでいいや。
『よろしく!あるじ!』
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