第6話 ハーブを探したり、人間について考えたりしたよ
魔道具を作ったり、ステータスを検証したりしながら、3週間経ちました。
毎日探索はやっていて、色々探していた中で、最重要課題としていたのが、塩だ。
この世界には、塩分が必要ないのかも知れないが、哺乳類には塩は必須の栄養素で、筋肉を動かすには必ず塩が必要なので、どこかにある筈だ。
獲物の血液にも、塩気が含まれているし、今もこうして活動できている理由は、どこかで塩分を摂取しているからだと思われる。
塩分としてではなくて、塩素とナトリウムを別々に摂取している可能性もあるけど、塩気を一番感じる血液からだろうなぁ。
なんかね、生肉の味に飽きてきた。
毎日毎日、角ウサギかツイストホーンディアの肉ばっかりで、たまに魚が入る程度しかないのと、調味料もスパイスも何も使わないから、食事に喜びが無いっていうかさ、嬉しくないんだよね。
人間だった頃は、自炊で色んな料理に挑戦していたから、その頃が懐かしいよ。
こうなったら、スパイス、ハーブ、野菜とかその辺を探しまくるぞー!!
と、意気込んではみた物の、雑草とヒールリーフとマジックリーフしか見つからない。
ちょっとちぎってみて、いい匂いのする草を集めてみたりもするんだけど、エグ味が強くて食べられなかったり、肉が匂いに負けて、味が全然判らない事も。
たまに見つけるのが、真っ青な粒の実で、とても食べられそうな色では無いんだけど、潰してみると山椒の様な香りがする。
鑑定してみると、プリックリーアッシュと出るから、まぁ山椒と見ていいだろうとは思う、思うのだが、この色は何とかならないのだろうか?
青色の食べ物って、全然美味しそうに見えないんだよね。
他のハーブっぽい植物も採って来て、乾燥させてみたけど、どれもパッとしない。
そして、何となく考えたんだけど、根っこのスパイスもあると思うので、探してみると、生姜っぽい物を見つけた。
毒性は無いし、舐めると舌がピリピリするし、体がポカポカしてくる。
ハーブやスパイスの探索をしている時に、西の方に行くと時々見つけるのが、人間の痕跡だ。
ナイフや折れた剣、ヘルメットやブーツなど色々あるが、中々人間の死体を見つける事ができなかった。
でも、人間の痕跡がある近くでは、ヒールリーフとマジックリーフをちょいちょい見つける事ができた。
生きてる人間には会う事は無かったが、少し遠出をした時に、頭蓋骨が転がっているのを見つけた。
その近辺には、指輪やネックレスと腕輪が転がっていたけど、シルバーの台座に低品質の宝石と破損した魔法陣が書いてある物だった。
どの魔道具も、STR+1とか、良くて+5程度の物が殆どで、そんな気休め程度の補助なんて意味があるのかと、不思議に思っていた。
人間の骨は残り易いのか、あちらこちらで見つける事が多くなったのだが、他の動物の骨は見つける事は殆ど無いのに、なんでだろうと思っていたら、人間の体には防具が着いていて、見つかるのは全身鎧の死体ばかりとなれば、きっと食べにくいのだろう。
部分的に見つかるのは、多分、防具で守られていない箇所は食べられて、守られている箇所は、主に小動物や小さい魔獣が食べたのだと思われる。
痛々しい話ではあるが、野生の森に入れば、人間も動物や魔獣の餌になる訳で、仕方の無い事だと思うよ。
ヒールリーフとマジックリーフっていうのは、死体の周りには沢山あったよ。
スパイスは、正直、よく解らないという事で、山椒以外が判らなかった。
いや、ホースラディッシュっぽい物はあったよ?でも、ツーンとしてもねぇ。
人間の死体を見て、不思議に思う事が幾つかあるんだけど、どれもこれも装備が貧弱と言える物ばかりで、真面な装備が見つからないのだ。
骨はバラバラだったが、装備は近くに纏まっていて、木に寄りかかってたり、岩の隙間に挟まってたりで、食い荒らされた形跡がある物ばかりなんだけど、たまに大きくひしゃげた防具もあった。
剣やナイフなどの金属類は錆びていて、材質は主に質の悪い鋼鉄が多く、アミュレットやタリスマン、指輪やピアスみたいな物などの魔道具を幾つか持っていた。
鑑定では、ゴミレベルと言える様な物ばかりで、プレートメイルに角ウサギの角に貫通された様な穴や、ウルフに咬まれた歯形が残っている物もあった。
それ以外には、冒険者証っぽい金属製のカードを持っていたから、拾っておいたよ。
ただ、角ウサギの攻撃も防げない様な装備で、人里離れたこんな森に入って来るのは、自殺行為だと言わざるを得ないよ。
プレートメイルのプレートの厚さを見ても、人が殴っただけでひしゃげてしまいそうなくらいに、ペラペラの鉄板だったり、そもそも鋼鉄じゃなかったり。
剣にしても鈍らだったり、欠けていたり、グリップと鍔だけ落ちていたりと、安物を買ったのか、メンテナンスをしていなかったのか。
剣の種類は、概ねロングソードが多いんだけど、折れてる剣が、結構な頻度で見つかったよ。
不思議と革鎧は見つからなくて、殆どがフルプレートで、たまに肩当と胸部だけを守る形の防具があった。
盾は木製の物がたまに見つかる程度で、グリップ以外は全部木製で、魔獣相手には役に立ちそうになかった。
武器防具の質を見るに、この世界の人間の文明レベルは低いんじゃないかと思っている。
文明だけじゃなくて、人間の意識自体も、低い可能性があると思うよ。
普通に考えて、ゲームじゃなくて現実なんだから、自分の命を預ける装備に金を掛けないという、意味の解らない状態で、この森に入って来るという事が、大した実力も無いのに、強いと勘違いしている可能性がありそうだ。
お金が無い?じゃぁ貯めて装備を揃えてから来ればいいと思うよ。
それに、装備の整備が全くできていない様な物もあるし、そもそも持ち物にポーションや傷薬も無く、腰にぶら下げる様な革袋はあっても、背嚢は落ちていない。
剣の柄に目釘穴が無い場合、最悪、剣がすっぽ抜ける可能性もある。
剣の中には一体型の物もあるのだが、その場合はグリップに革を巻いたりして、カスタマイズしたりすると思うのだが、革が巻かれている物は見た事が無いのだ。
金属のグリップなんて、手汗をかいたら、すっぽ抜けるじゃないか。
死体のステータスはみる事ができないので、死んだ奴がどのくらい強いのかは判らないが、大した腕では無いと思える。
未だに街道なんて見た事が無いから、死体のある場所は、それなりに森の中に入り込んだ場所の可能性が高く、ウルフ系やボア系を見かけないから、比較的入り易い、難易度の低いエリアなのかも知れないが、死んでいる以上は、入って来れるレベルに達していない可能性が高いだろう。
道に迷った可能性も捨てきれないが、昼間なら方位が判るだろうし、夜中に森の中をうろつくなんて、本当に自殺行為にしかならないよ。
夜中の森の中は、夜行性の動物や魔獣がうろつくから、昼間は静かでも、夜になると結構騒がしくなる。
別に、狂暴になる訳じゃないけど、数が増えるんだよね。
特にうるさいのが虫系の奴らで、蛾やら甲虫、蝙蝠っぽいのもブンブン飛んでいて、その全てが肉食系で、夜中にライトボールを打ち上げると、虫の大群とその虫を捕食する蝙蝠で、しっちゃかめっちゃかになる程だ。
魔法の練習には丁度いい的になってくれるから、ライトボールを打ち上げて、ウインドカッターやファイアーボールの練習に使ったりもしたよ。
ただ、蜘蛛やトカゲもたくさん集まって来るので、落ち着いていられないから、魔法の試し撃ちがしたい時だけしかやらないよ。
トカゲなんて歩留まり悪いし、小骨が多くて美味しく無かったし、倒すと虫がたかって、あっという間に骨になったりするから、狩りにならないってのもあるね。
それに、蜘蛛がうっとおしくてね。
糸をビュンビュン飛ばしてきて、燃やすと着火剤かよってくらいによく燃えて、ウインドカッターは、糸をばら撒かれて打ち消されるし、ウォーターボールは避けられ、ストーンバレットは、糸で落とされて、打つ手なしって感じだったよ。
巣穴に逃げ込んだら、出入り口に糸を張り巡らされたし、もう煩いったらありゃしない。
最後は、ウインドウォールとファイアーボールの合わせ技で撃退したよ。
出入口の糸をそのまま燃やしたら、酸欠になっちゃうからね、ウインドウォールで火がこっちに来ない様にしつつ、空気も取り込めるようにして、糸を全部燃やしてやったら、居なくなったよ。
労力の割に、得る物が少ないって思ったんだと思う。
虫についても、色々試した結果、相手にしない方が良いって事と、沢山湧く森もあれば、全くいない森もあるって事が判ったので、夜間に湧く所には近づかない様にした。
そもそも、毒持ちが多いし、食べられないので、狩る意味も無いしね。
今重要なのは、人間の方であって、捕食するつもりは無いよ?街に行きたいだけだよ。
この世界の人間が、どんな料理を食べているのか気になるし、仲良くなれるかも知れないからね。
信用できそうな人間なら、契約してもいいと思ってるよ。
テイマーいるよね?居なかったとしても、契約とかできるよね?コントラクトって魔力を乗せて言えば反応するから、多分できる筈。
隷属の方の魔法かも知れないけど、今の所、試せる相手もいないし、試したいと思う相手も居ないから、やらないけどね。
そんな事を考えていたら、無性に人間を見てみたくなって来た。
もしかしたら、野盗とか盗賊みたいな連中かも知れないけど、ちゃんと相手は選ぶつもりだよ。
デブっちぃ貴族とかは嫌だけど、騎士とかエルフとかいないかなぁ?どんな種族がいるのか、楽しみだなぁ。
だから、明日からは、探索範囲を広げて、人間を探そうと心に決めた。
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