第4話 魔法を検証してみたよ

 一週間もすると、周辺に小動物が居なくなった。

 まぁ、仕方ないよね。

 狩られる側は、捕食者の近くに住むにはリスクがあるからね。


 魔法の検証も進んでるよ。


 無属性魔法や生活魔法の中には、事象だけで発動する場合もある事が判った。

 例えば、[サーチ]、これは探知する魔法だが、何かに特化する訳では無いので、色々な物が引っ掛かるのだ。

 精度を高めるには、何を探知するのかを指定する必要があって、指定して探知に成功すると、スキルを覚えたよ。

 つまり、魔力感知というスキルも、元が魔法なのだと思う。

 どうりで、MPを消費する訳だ。


 何故英語なのかは判らないが、撥水も英語にすると発動するし、防虫ならインセクティサイドで発動した。 

 蚤を防げると思って使ってみたのだが、厳密には虫では無いダニ類には効果が無く、発動しているのが、皮膚より少し上辺りなので、その下に入り込まれると、蚤でも防げなかったのだ。

 残念。


 魔法の詠唱はとりあえず、ネイティブじゃなくて、日本語読みなのは、楽でいいね。


 実験が楽しくて、つい調子に乗ってしまい、テンパーチャーコントロールで、温度調整ができる様になってしまった。

 調節できるのは、体温と周囲の気温で、スライド式スイッチみたいなものが、視界の隅にでてきたよ。

 平温なら問題無いけど、温度差によっては、MPを消費する様になるという事も判った。


 何故そんなにも必死に魔法を考えるのかというと、小さい体に道具を使えない手足、不便極まりないのだ。

 元人間で、つい先日まで人間の生活をしていたのだから、突然四つ足になって、その生活に慣れるかと言えば、無理だよね。

 その不便さを一部解消するだろう魔法を、何が何でも覚えたいと思った。

 これは、アイテムボックスが欲しかったのだが、どこを探しても無い様子。


 魔法の自由度が高いのだから、無い筈は無いと思い、ずっと色々と試していた。

 属性としては、空間魔法だと思われる。


 欲しかった理由は、まず、手に持てないので、持ち運びが不便である事。

 大量に何かを見つけても、持って帰れないのだ。

 川底に、を見つけても、持って帰れないし、食べられる木の実を見つけても、その場で食べるか、一つだけ持って帰るかの二択しか選べないのだ。

 元人間としては、悔しい限りである。

 そして、多少大きい獲物であったとしても、食べ残しを持ち帰れるメリットは大きく、何が何でも欲しいと思ってしまうのだ。

 難しいのは判っているが、諦めるにはまだ時期尚早だ。


 英語では、アイテムボックスは道具箱になるから、違うとして、インベントリも目録とかの意味だから違うし、スペースボックスでも違う、スペーシアルコンテナーも違った。

 空間?空間的?、何か違うよね?、空間というよりも、次元的な話だから、ディメンション?と発言した時に、一瞬魔力が反応したから、ディメンショナルホールと言ったら、失敗した。

 何故だ?、他の言葉が違う可能性も含めて、ウェアハウスとかボックスとかインベントリとかバッグとか色々言ったけど駄目で、ディメンション、ホールで発動したんだよ。

 この法則を考えた奴、絶対何かのゲームか、アニメの影響を受けてるよな。


 何故これだけなんだよ。

 ド○えもんの四次元ポケットでも、フォーディメンショナルポケットだった筈だぞ!

 何気にこういう突然の法則無視には、イラッと来るんだよね。

 しかも、チックなのにスキルでは無く、魔法とか。


 中の広さは、多分MAG値が基準になっていそうだ。

 イラついてて忘れてたが、鑑定してみた。


 ディメンションホール

 中の広さは、MAG×1㎥で、生物は入れられない。中に入れた物の時間は止まる為、長期保存に向いている。

 中身は、インデックスに表示されて、確認する事ができる。

 

 任意の空間に、次元の穴を開け、異空間へ繋げて、結界で指定範囲を作っている感じの様だ。

 生物の範囲がよく解らないが、生きてる動物と生きてる魔獣が入らない様子。

 微生物については、入口で死ぬって事じゃないかな?毛虫の様な、植物に付いている虫は、弾かれて落ちた。

 卵や蛹でも試してみたいのだが、手元には無いので、手に入った時にやってみよう。


 容量は、1㎥×MAGという事は、今がMAG5054だから、505.4万リットル、大体、小学校の25mプール20杯分くらいかな?かなり広い。

 箱型ではなく、体積って意味だろうから、かなり自由度は高いのではないかと思う。

 そして、液体でも砂状でも入り、入れた時の状態のまま取り出せるのだ。


 例えば、砂を100グラム入れたとして、追加の100グラムを入れると、砂200グラムとなり、150グラムだけを出す事も可能になるのだ。

 ディメンションホールを覚えたおかげで、時空間魔法を習得した。

 一応、空間に黒い穴が開いたので、食いかけの肉を入れてみると、目録が出た。


 前足を突っ込もうとしても、中に入らないので、一度閉じてぇ、下に向けて開いてぇ、選択したら落ちてきた。

 地面に肉の面から落ちてきたのを見て、あぁ、皿が欲しい・・・と思ったね。

 おかげで砂まみれですよ、お肉が!・・・何で中身まで逆さになって落ちて来るかなぁ。

 尻尾もお怒りの様で、ビシバシ地面を叩いてますよ!!


 ディメンションホールのサイズの決め手にもなっている、MAGというステータスについては、いまいちよく解らないんだけど、多分魔法の熟練度とか、威力に関する数値だと思われる。

 MPにも関係していて、最初はMAGの10倍だったのが、途中から20倍に増えた。

 だから、今のMP最大値は、101089もある。

 MAGの増え方は、110%ずつ増えている様だから、初期値が1000で計算するとLv18かな?Lvという概念は何処にも表示されていないんだけど、成長と共に数値が増える所を見ると、裏設定にレベルがあると思われる。


 どの数値が重要なのかは、色々試した結果、STRとMAGだけなんじゃないかと思ってるよ。

 他にも色々数値が隠されているとは思うけど、気にしたら負けな様な気がする。

 だって、どんなに数値が良くたって、技量が無かったら、宝の持ち腐れだし、心が弱かったら全力を出せないからね。

 気にするだけ無駄だと思うよ。


 魔法を使うには、熟練度を上げる必要もあるみたいで、撃ち出す魔法を撃ちっ放しではなく、誘導したり、手元で形を変えたりして、操作する必要もあるみたい。

 暇を持て余すから、ウォーターを出して、色々な形に変えたりできないかと試していたら、魔力操作っていうスキルを覚えたよ。

 このスキルは、パッシブスキルみたいで、特に発動とかは必要無くて、覚えた後は、同時発動の個数が増えて、追尾させるとか、狙った所に当てるとか、魔法に関する様々な事に使える便利なスキルだった。


 この魔力操作のおかげで、ディメンションホールを任意の場所に、出現させる事ができる様になったし、上位魔法も使える様になったのだ。


 お皿を作るには、まずは材料だね、という事で、探す方法を考えるよ。

 材料を取りに行くとなると、やはりあの川底が気になるところなんだけど、どうやって潜水するかが問題だ。

 一方、潜水しない選択肢もある。

 それは、川の流れを変えてしまう方法なのだが、結構大規模になってしまうので、MP的に難しいと感じている。


 という訳で、一旦川にやってきた。

 流れとしては、小川程度ではあるんだけど、決して水量が少ない訳では無いので、流れを変えるよりも直接掘りたいと思った。

 潜る方法としては、アンカーを付けて潜るか、川底にディメンションホールを出して、一気に流し込むか。

 

 水深30㎝で何を迷ってるんだと言われそうだけど、今の体では、高さが25㎝くらいしかないから、完全に沈んでしまうんだよね。

 しかも、子猫って1週間もすれば、二回りくらいは大きくなるよね?何故か俺はサイズが変らないんだよ。

 成長しないとか、一体誰の差し金なんだよ。

 

 とりあえず、川岸から川底にディメンションホールを出して、掘ってみようと思う。


 「ミャ」『[ディメンションホール]』


 すごい勢いで水量が増えて行ってるが、川岸を移動するとディメンションホールも一緒に移動するので、川底の素材も一緒にどんどん入って来る。

 水深2m近くの所に出したから、水深も2mになっていた。

 不要な水をディメンションホールから排出しながら、内容物を確認してみると、宝石の原石に加えて、金属の鉱石も大量に混ざっていた。

 ゴールドナゲットも大量に入っていて、3トンも入ってるよ。

 まぁ、こんな成りだから、使うあてが無いんだけどね。


 たとえ、人里に行ったとしても、金に換えてどうするって感じだ。

 だって、お金も使う宛が無いんだから。


 まぁ、これだけあればいいだろう、疲れたし戻って・・・何しに行ったんだっけ?


 住処に戻った時に、金属で皿を作ろうと思った事を思い出した。

 これはやっぱり、錬金術?と思い、鉱石を取り出して、錬金術の魔法を探る作業に入った。


 「ミャ」『[セパレーション]』


 鉱石の山が種類ごとに分かれただけだった。

 分ける作業も、成分の分離と物質毎の分離は違うという感じかな?物質毎のは、分離と言うか、分別だな。

 錬金術のを使う時は、普通の魔法とは区別する必要があるって事で、アルケミーと唱えると、魔力が反応した。

 

 「ミャ」『[アルケミー・セパレーション]』


 金属成分と岩石成分が分離した。

 分離した後の岩石、所謂スラグと言っても、とかした訳でも無いので、普通に砂利になっただけの物と色んな金属の粉ができあがった。

 含有率少ない金属は、分離作業コストの問題で、前の世界では無視される事が多いのだが、魔法でやる分には、[マテリアル]と[メタル]で分離できるので、コストもかからないし、小まめにやっておこう。

 この世界では、メタルとマテリアルの違いは、金属と宝石や非金属として指定できる様だ。

 宝石も金属成分が含まれているんだけど、マテリアルに分類されるみたいだね。


 今回使うのは、錫、加工しやすくて銀色が映えるやつ。

 何で錫にしたのかと言うと、元人間の貧乏性が出て、金で作るって考えが浮かばなかったからだよ。


 「ミャ」『[アルケミー・モールディング]』


 成形は、これでできたよ。

 模様も意匠も何もないただの皿?お盆と言ってもいいくらいの物だね。


 これでやっと、砂まみれにならない食事ができる訳だが、何の模様も無い皿を見て、彫金とまではいかなくても、ちょっとした文様くらいは作れる様に、練習してみようと思ったよ。

 だから、明日からは鉱石集めと、工芸技能の習得だ!

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