第3話 探索を進めてみた

翌朝に思ったんだけど、MAGは1000から1210に増えているんだけど、他が全然微動だにしないんだ。

 MAGは魔法に関する数値みたいだから、魔法をバンバン使っていたから上がるのは判る。

 だけど、初日にペルグランデスースに追いかけ回されて、散々走り回ったのに、STRもAGIも微動だにしないって可笑しくない?

 で、思ったのが、自動回復だ。

 この魔法は、常時と任意のどちらかを選べるようになっているんだけど、常時だとほぼ疲れない。

 初日は肉体的に疲れたというよりは、精神的に疲れた感じで、翌日に筋肉痛にもなってないんだよね。

 しかも、ちょっと動くと、すぐに発動する。

 試しに任意にしてみた。


 3日目は、池とは反対方向を進んでみたよ。

 こっちは、木の実が沢山生っていたんだけど、殆どの木の実が薄くピンク色に光って見えるんだよね。

 一つ落として鑑定しみてみた。


 「ミャ」『[鑑定]』

 ワニナシ(毒)


 ワニナシって、確かアボカドの和名だった気がする。

 皮が鰐の皮に似ているからだそうだよ。

 確かにアボカドは、人間以外には猛毒で、動物に食べさせてはいけないって言われてた。

 というか、アボカドの語源の方じゃなくて良かったね。

 あっちは、完全に下ネタだからね。


 近くにはもっと大きな実が生っていたので、そっちも落として鑑定し見てた。


 「ミャ」『[鑑定]』

 ブレッドナッツ(毒)


 パンの実ならぬパンのナッツ?説明文では、とだけ書いてある。

 食えないって事か。

 他にも色々と木の実が生っているんだけど、ワイルドグレープとデュケスネア・チュユサンタ以外は、全部毒だったよ。

 ワイルドグレープは、山葡萄の事かな?一粒食べてみたけど、星が散るくらいに酸っぱかった。

 デュケスネア・チュユサンタは、確か、蛇イチゴの事だった筈。

 緑色のしか無かったよ。


 こっちの方は、少し傾斜があって、どんどん昇って行く感じで、地面は落ち葉が積み重なっているから、フカフカしてて歩きにくい。

 進んでも進んでも、景色はほぼ変わらず、草も殆ど生えていないので、見晴らしは良かったんだけど、食べられそうな物が殆ど見当たらない。

 なので、スキルの検証をしてみる事にした。


 まずは、猫パンチから始めたんだけど、目の前の凄く太い木に向かって発動したら、メキメキ音がして、木が倒れた。


 ポカーン・・・

 「ミャー・・・」『なに・・・これ・・・?』



 切り株になった根元を見てみると、殴った所がホールソーでも使ったかの様に、丸く抉れてる。

 木の中心部分には腐った空洞があったから、強度が無かっただけかも知れないが、それにしたって手のサイズよりも大きく抉れ過ぎだろう。

 何かの補正がかかったのかも知れないが、よく解らないので、もう一回別の木でやってみた。


 メキメキメキ

 ドサーン!


 スキルを使う瞬間から、感覚やインパクトの瞬間を注視してみたが、どうやら何かが手の平から出て行く感じがしたのだ。

 ステータスを確認してみると、MPが若干減っているから、スキルを使うとMPを消費するみたいだった。

 

 気を取り直して、次は猫キックの方を発動しみてたが、後ろ向きに蹴るのではなく、飛び蹴りになった。

 後ろの木を蹴るつもりが、前に飛んでキックって、どこのアニメだよ。

 いやいや、普通の動物は後ろ蹴りが主流でしょうに、目の前の地面が大きく数メートル抉れたよ。

 いくら落ち葉が積み重なっている地面だとしても、そうはならんだろ。

 抉れた地面を見ても、腐葉土ばかりで、土が全然見えてこないのも凄いとは思うけど。


 まぁいい、次だ次。

 今度はかみつきなんだけど、何故ひらがなで、(?)が付いているんだ?何となく嫌な予感がするけど、とりあえず使ってみた。


 ガブッ!

 『!?・・・ペッペッ!苦っ!ジャリジャリが気持ち悪っ!!』


 咬みついた場所には、ハッキリと歯形が残ってはいるが、木を噛み切る程では無い様だ。

 次だ次!


 「ミャ」『引っ掻き!』

 スパッ

 ドザーン!

 ポカーン・・・


 何で、爪が3ミリ程しかないのに、向こう側まで切れてんのさ。

 しかも、爪の当たった個所には、スライスされた木が数枚あるのだ。

 4本の爪を使うイメージで使ったから、4カ所切ったって事?今回も何かが出て行く感覚があったから、魔力を出して切ったのかも知れない。

 MPもちょっとだけ減っているから、そういう事なのだろう。


 次は・・・頭突き?頭が痛くなるイメージしか無いんだけど、やる?やらなきゃ駄目?

 むぅ・・・ちょっと柔らかそうな物を見つけて、試してみよっかなぁ。

 ほら、こんな森の中で気を失っても困るしさ。

 それに、何かさっきから、何かに見られている様な感じがあるんだよね。


 「ミャ」『魔力感知!』

 「フミャー!!」『朝飯見つけたー!!』

 

 ケプッ、空腹は満たせたけど、肉が余るのが何とも、ちょっと勿体ない気分になるよ。

 昨日もずっと考えてるんだけど、アイテムボックスというか、インベントリというか、無いのかなぁ?

 サンドボックスも違ったしなぁ。

 砂の箱が出て来ただけだったよ。

 需要無いだろ?砂の箱とか。

 色々考えてはみるんだけど、判らないんだよね。

 今のままだと、何かを見つけても、一つしか持って行けないし、食べ物ならその場で食べるか、一つ食べてもう一つは咥えて持って帰るかしか、方法が無い。

 まぁ、その内判るだろうから、今は探索に集中するか。


 テクテク歩いてはいるが、小さいから全然進まないんだよね。

 一歩が5㎝くらいしかないから、100歩進んでもたったの5mにしかならない。


 『うっし、ちょっと走ってみるか!』


 1時間くらい走ってみたけど、景色が全然変わらないでやんの。

 岩も無ければ小川も無いし、あるのは木ばかりで、たまに角ウサギを見かける程度で、目ぼしい物が見つからない。

 地面が落ち葉だから、走ると埋もれるんだけど、段々コツが掴めて来たのか、埋まらなくなってきた。

 まぁ、落ちている枝とか木の実とかの上に乗れば、埋まらないってだけだけど、それでも走り易くはなってきた。

 走ると一歩が50㎝くらいになるから、大人が歩くスピードくらいにはなってるのかな?


 木の上にも登ってみたけど、見えるのは森の木々だけで、何にも見えない。

 いや、後ろを振り返れば見えるよ?拠点にしている岩山がさ。

 全然進んでねぇのよ。

 もう、枝から枝に飛び移って移動しようかと思ったんだけど、着地の時に爪が出るから、枝ごと落ちるんだよね。

 まぁ、落ちても、スチャッと着地ができたので、良しとしよう・・・いいのか?


 とりあえず、晴れてるから方角は判り易いので、迷子にならない様に広範囲に探索をしてみたよ。

 朝に進んだ方向は東だったから、南東方面に向かってみたら、イノシシが激突した崖に到達したよ。

 でも、割と近くから、ゴフーゴフーって呼吸音が聞こえるから、近くにペルグランデスースが居るのかも知れないので、すぐに離れたよ。

 こちとら、歩幅数センチで、向こうは数メートルと考えれば、あの崖近辺はぶつかった所のすぐ近くなのかもしれないね。


 東南東方面に向かってみると、植生が若干変わった気がする。

 森の明るさがちょっと、薄暗くなった気がするし、虫系が増えてきた気もする。

 基本的に、何を見ても地球よりもサイズがデカくて、カマキリが子犬か小型犬くらいの大きさで、カブトムシっぽい甲虫なんて、人間よりデカそうだ。

 何を食えば、あんなにデカくなるのかと思えば、鹿を食ってたよ。


 口も飛蝗やカマキリみたいな口だったし、とても樹液をチューチューする様な感じでは無かった。

 魔力感知で、背後から何かが近づいてきたから、振り向いてみたら、でっかい蝶がストロー伸ばして飛んで来てたよ。

 危険な気がして甲虫の背中に降りて、ちょっと離れてみると、甲虫とバトルを始めてた。

 蝶も肉食なのかと思って見ていると、羽から鱗粉をばら撒いて、甲虫がひっくり返った。

 そして、甲虫には見向きもせずに、鹿の周りに溜まった血を飲んでた。


 確か地球でも、死体に群がる蝶は居た筈だから、可笑しくは無いんだろうけど、何だかなぁ・・・。

 まぁ、あの大きさを維持する為には、花の蜜だけでは足りないだろうし、この世界ではそういう物なんだと思うしかないかな。


 因みに、虫は食べたいとは思わなかったよ。

 子供の頃に蝗は食べた事があったけど、ばあちゃんが作ってくれたのは、サクサクのスナック風だった記憶がある。


 日暮れまでは、まだ時間があるみたいだから、東北東方面に向かってみた。

 正直、こっちはハズレだったね。

 植生が東とほぼ変わらず、なーんにも無かった。

 いや、一つ見つけたのは、糸だった。

 釣り糸みたいに透明で、凄く切れにくくて、乗っても切れないし、上でビヨンビヨン跳ねても平気だった。

 蜘蛛でも居るのかと思ったけど、特に何も近づいて来なかったので、そのまま放置してきた。


 今日の所は、これでタイムアップかな。

 結構走り回ったから、疲れたよ。

 帰って休もうと思う。


 夜にステータス確認をしてみたら、STRとAGIが微妙に上がってたよ。

 これで確定したけど、自動回復は地雷だね。

 怪我でもしない限り、発動しない事にしたよ。

 因みに、任意にして発動した場合は、3分間持続するだけだったよ。

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