第2話
思わず、彼女・サンドリヨンは瞼を何度も瞬いた。
(この御方は一体…)
灰ノ聖女以外、使用する事の出来ない魔力を感知した。
何故、この男からそれが感じ取れるのか、分からない。
未知数な相手であるトクサに対し、それでも彼女は彼の体を抱き続ける。
決して、恐怖は無かった。
嫌悪感も無かった。
それは、少なくとも彼が、サンドリヨンを救けてくれたからだ。
このまま、魔人たちに体を差し出せば、滅茶苦茶に犯されていた。
それが本来の未来だったのだが、それでも、トクサの登場によってその未来が書き換わった。
サンドリヨンがその未来を知る事は無いが、少なくともこの状況で、サンドリヨンを救けてくれたのは確かな事であった。
(この人がいなければ…今頃、私は)
自然と、サンドリヨンの中で。
感謝の気持ちが生まれつつあった。
そんな時。
「ひぃ!!」
女性たちの声が聞こえてくる。
それに反応するサンドリヨンは視線を女性たちに向けた。
其処には、猿の様な見た目をした魔人たちが居た。
どうやら、先程滅した魔人以外にも仲間が居たらしい。
(…このままでは、彼女たちが危険…しかし、まだ人質には取られていない)
魔人たちが、女性たちを人質に取る前に行動を起こす。
サンドリヨンは地面を蹴った。
肉体に流れる魔力機構から膨大な魔力が脚部へと流れ出す。
構築される武器は、銀よりも輝かしく、白よりも澄んだ、透明の刃である。
彼女の脚部に纏わり付く様に装着されており、これによって彼女の身長は更に伸びて二メートル五十以上となった。
足先が鋭く細い、鋏の様に先端が尖ったものであり、しかしながら彼女は歩き難い、と言った様子は一切見せる事は無かった。
きらきらと宙に舞う魔力の破片。
砂粒よりも小さな粒子は、彼女の周囲に浮かんでは沈みを繰り返している。
ゆっくりと息を吐く、サンドリヨン。
眼を開き、長い睫毛を瞬きさせながら、魔人たちに視線を向けて、自らの力の名を口にした。
「〈
それが、
「うぉ、ばぁ!!」
魔人たちが、彼女に向けて走り出した。
棍棒の様に削って作った木材で振り回している。
人間の膂力の十倍はある魔人の攻撃が当たれば簡単に人体を破壊する事が出来るだろう。
しかし、当たればの話であり、そもそも、同じ様に魔人の血を持つサンドリヨンが、魔人の攻撃程度で怯む事も無い。
地面を蹴るサンドリヨン。
そのまま宙を舞うかの様に浮かび上がると。
魔人たちに向けて蹴りを放つ。
薄く、鋭い氷の様な刃。
斬撃の筋を少しでも逸らせば折れてしまうだろう、そのガラスのヒールで、魔人たちの頭部を縦に切り裂く。
如何に、硝子の様な武器であろうとも、あくまでも硝子に見えるだけだ。
実際の所、サンドリヨンの魔力で形成された〈
決して、雑魚の魔人たちでは破壊する事など出来ない代物だった。
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