第7話 シニガケ契約による付与

「究極身体再生能力……?」

 俺がそう呟く時には俺の腕は完治していた。

 まごうことなき完治だ。

「はい、その名の通り、凄すぎる身体再生能力の事です。天使とのシニガケ契約を契った人間に付与される「非科学的能力」です」

「なんだよそれ……」

 無論、そんな滅茶苦茶、即座に理解できるわけがない。

 というか、まず俺はこいつが本当に天使なのか、シニガケ契約とはということも冷静に理解することはできていないのだが。

 しかし、ここを飲み込むこと……できるか?

 まぁ、意地でやらないといけないのだろうけど。


「……あ」


 瞬間、白羽は意味ありげに呟いた。

 実際、その呟きは意味を持っていたようだ。

 その数秒後、教室の全ての窓が砕け散った。

 誰だ、器物損壊罪で逮捕するぞ。

 いや、まず俺を刺したアイツは殺人未遂罪で捕獲しなければならないのでは?

 

 そんなことを考えている場合ではない……。

 今、俺たちはこの危機のことを考えなければならなかったのだ。


 窓からは濃い煙がたっている。

 どうやら、ある爆発によって窓は破壊されたようだ。

 その後、眩しい赤紫の光線が煙の中から生えてきた。

 その光線は真っ直ぐ俺の額に向かっていき、皮膚を溶かし、脳を焼き払った。

「……浦川さん!」

「そんな人間なんかを気にしている場合か?」

 その幼げのある男の声を……俺は認識することには間に合わなかった。


*****


 今、そこには額に穴をあけて、同時に目を見開いて倒れた男がいる。

 彼には「究極身体再生能力」があるから、じきに目覚めるだろう。

 問題はこいつだ。

 目の前にいるこいつ。

 窓を割った張本人。


「天使と人間がいる予感がしたから来てみれば……なかなかに平凡な奴と契ったな」

「なかなか勘がいいわね。ええ、その通り、全くもって普通の男よ。でも、彼が選ばれた人間なの……」

 私はにやつきながらのびた彼を見つめる。

「厄介な奴だ。なんだってシニガケ契約を契られてしまったのだからな。その厄介さは俺もいくばかりか契って、利用させてもらったからわかるよ」

 この男を私は知っている。

 なんたって、元同僚なのだ。

 しかし、彼は私たちを攻撃したことから分かる通り、こいつは悪魔陣営の男だ。


───わかりやすく言えば、こいつは「堕天使」

 天使から、悪魔の道に堕ちた、そんな男だ。


 つまりは敵。

 私はその手で「光剣」を創造した。

 戦闘意思を示したのだ。

「おいおい、ミラシエル、俺と闘う気なのか?」

「一応、敵だからね……」

 私はそう言いながら、剣を試し振りする。

「天使育成学校での事を忘れたか?俺が主席でお前はほぼビリだったじゃねえか。正直、お前が天使軍に就職したときには正気を疑ったよ」

 男はそう言いながら笑う。

 そう言いながら、彼の背中に着いている黒い翼を滑空する形にした。

 私も白い翼を背中から生やす。

「俺の仲間がここまで来るまでに倒してやる」

 天使は飛行能力に長けている。

 おそらく、彼は自分の仲間の部隊をちぎってここまで来たのだろう。

 つまりはこの後増援がもっと来るということだ。

「ちょっとヤバそうだから、隙を持って表に逃げさせてもらおうかな……」

「随分弱気だなおい」

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