第3話 使者・白羽天の正体
そんな答えは分かり切ったことだ。
彼女は今「シニガケ契約」の話題を出した。つまりはそう言うことなのであろう。
にわかには信じがたいが。
「契るっつったって……まず君が何者なのかもはっきりしていないし。そのシニガケ契約とやらの詳細も聞かされていないし」
「確かにそうですね……では、まず、私の紹介でもしましょうか。休み時間も残り少ないので、手短に……」
彼女はそう言いながら、手を胸に置いて、話し始めた。
「私のこの世界での名前は白羽天です。しかし、私はこの世界の人ではありません。上の世界、「天界」の住人なのです。つまり、私は貴方たちの言う「天使」というものに値するのでしょう……。そして、私の本当の名前は……」
「本当の名前……」
俺は唾を飲んだ。
緊張が走る。
「それは……ディペンダンシー・ミカエル=ミラシエル」
「……なんて?」
よく聞き取れなかった。
「へ?だ、だからディペンダンシー・ミカエル=ミラシエルです!」
白羽は焦った様子で腕を激しく振りながら、今一度言った。
しかし……長ぇ。
キーンコーンカーンコーン
そんなことをしている間に休み時間終了が迫っていることを意味するチャイムが学校に鳴り響いた。
「もうこんな時間か……では、また話しますので、終礼が終わったら、教室で待っていてください」
彼女はそう言うと、そそくさとそこから立ち去っていった。
————めんどくせぇ……。
*****
「つーわけで、今日は新しい仲間が増えたということで、お前らこれから白羽のことはしっかり気をかけてやれよ。不登校にもなられて、その対処するのは結構面倒なんだからな?もし、それをやるくらいなら原因の生徒を公開処刑したほうが楽だから、いじめなんかをする奴は覚悟しとけよ。じゃあ、解散!」
帰りのホームルーム。
横井先生が自分の怠惰の為に生徒に脅迫まがいの注意をして、本日の学校は終わった。
「そういえば、俺なんか用事なかったっけ?」
この時、俺は午後授業の疲労によって、白羽の事を完全に忘れていたのだ。
ホームルームで先生が白羽のことについて話していたのであるから、思い出してやれよと思うのかもしれないが、あんな先生のホームルームでの話など、九割は全くためにならないので、ほとんどの生徒はその言葉に耳を傾けてはいないのである。
というわけで、俺はそのまま真っ直ぐ帰路についていた。
───あいつに天空の加護はついているか?
───いや、まだついていない。
───なるほど、では、今がチャンスか?
───そうだな、今のうちに殺ってしまったほうがよかろう。
俺はこの時、一人でトボトボと歩いていた。
それにしても、今日は少し雲行きが怪しいな。一雨来そうだ。
さっさと帰ったほうがよさそうだ。
俺はそう思い、少し足のピッチを速めた。
ドガーン‼
突如、雨も降っていないのに、雷が空高くで鳴り響いた!
それによって、俺の視界世界は一瞬光に包まれ、俺は周りが見えなくなっていた。
「な……なんだ?」
俺は空を見上げる。
その時、背中から感じたことのない感覚が走った。
凄まじいほどの痛覚だ。
「っ……⁉」
俺は声も出ずにその場に倒れこむ。
なんだ……この鋭利な痛覚は……!
ナイフにでも刺されたか⁉
うつ伏せで倒れてしまった俺は相手の正体を探ることはできなかった。
正体こそは探れなくとも、これだけは分かる。
───あ、コレ……死ぬ……じぬ……。
「やったな、これで、対天空戦でも優位に立つことができそうだ!」
「なんたって、闘いの切り札であるキーパーソンをここで倒せたのだからな!」
二人の男の声が聞こえる。
こいつらか、俺を殺したのは……。
「では、行くぞ。大魔官様が報告をお待ちだ」
「そうだな」
すると、その二人の気配は消えた。
まずい、目が霞んでいく。
そろそろ命も限界であろうか。
俺は自らの最期になるであろう心拍を聞きながら、
そっと目を閉じた。
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