第2話 天空の者の使い人
転校生当日の恩恵とは実に騒がしいものだ。
学校の連中は転校生情報を聞きつけ、この教室にやってきては彼女に話しかける。大勢がだ。
つまり、これからしばらく、俺の隣の席は随分騒がしくなるのだ。
俺はそれを横目に俺は粛々としておこう。
と、考えていたが、休み時間。彼女は席にはいなかった。
「あれ?おい浦川、白羽さんどこ行ったか知らんか?」
美少女天使・白羽天に話しかけようと図った生徒たちが俺にそう訊ねてきた。
「知らねーよ」
俺はそう冷たくあしらう。
「まじか、どこに行ったんだよ」
そこに集っている準ナンパ師は頭をかきながら、困った表情をしていた。
「本当に知らないのか?」
そう訊ねたのは裕也。
「まじで知らねーよ。てか、嘘をつく必要性がないだろ」
「いや、笹野が天ちゃんを独り占めにしたいのかなって」
「天ちゃん?」
すると、裕也は自信満々な顔をしながら。
「俺、可愛い女の子は心の中ではファーストネーム+ちゃんで呼んでいるから」
うん、どうでもいい。
俺はそんな裕也に呆れながら、ふと、自分の机の引き出しをまさぐった。
すると、見覚えのない紙切れが一枚あることが確認できた。
───なんだ?コレ?
俺は何か変な予感をしながら、他生徒に悟られないように、背中で壁を作って。その紙切れを開いてみた。
そこには、女の字が書いてあった。内容は……
『一階西階段陰にて待つ』
果たし状か?
少なくとも、俺は誰かに果たされるような覚えはないのであるが……。
しかしながら、これは誰かに見られてはいけない。
そんな気がした。
*****
何やら場所が書かれた紙切れが引き出しにて入れられていたのだが、このメッセージ、時間指定がないな。
そこで、俺は「今いない白羽天」が頭に引っかかる。
もしかして、このメッセージ、白羽か?
となると、彼女は今、あの薄暗い場所で待っているということなのだろうか。
俺は慌ててその場から立ち上がった。
「ど、どした?」
裕也が訊ねる。
「……大の方に行きたくなった!」
*****
もう少し上手い誤魔化し方があったと走りながら、俺は後悔した。
あの時の裕也の同情の目———-流石に痛かったぜ。
まぁ、そんなことはさておき、ひとまず目的地へと行かなければならない。
———やっと気づきましたか。
俺が廊下を走っていると、その背後に奴がいた。
美少女天使転校生・白羽天。
「い、いつの間にそんなところに……?!」
「ところで、決めていただけましたか?」
白羽は口を小さく開けて、そう呟いた。
その時の俺を見る目は鋭かった。
「決める……?」
俺は顔をしかめる。
彼女が何について話しているか、俺はピンとこなかったのだ。
「アレ……?おかしいですね。ちゃんと昨夜にメッセージを送っていたはずなのに……」
——-昨夜?
——メッセージ?
決める……。
「契る……」
俺は連想する単語の中で、それをつい、口に出してしまった。
それには、白羽も勿論反応する。
「そうです。それです」
この感じ……。
俺はもしや、地雷を踏み抜いたのかもしれない。
「では、どうですか?契るのですか?シニガケ契約を」
白羽天。
謎の美少女転校生。
彼女がやはり、あの夢で言っていた「天界の者の使い人」だったのだろうか……。
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