タイトル:『ちいさな魔女と災禍の獣』

【概要】


 構想開始時は2021年頃。たぶんシアハニー・ランデヴの原型のひとつ。魔女と獣の異種バッドエンド悲恋物語が書きたかったと思います。


 ジャンル:異世界ファンタジー(※転生なし)/恋愛


【あらすじ】


 物語の舞台は魔法が存在する世界。魔女と呼ばれる魔法の力を持つ女性たちがいる。


 ちいさな魔女アンジーは、森の中で記憶を失った美しい少年リュシアンと出会い、恋に落ちる。リュシアンは神父に保護され、村で神父見習いとして暮らすことになる。リュシアンは、あっという間に村に溶け込み、人気者になる。アンジーとリュシアンはお互いに惹かれ合い、やがて恋人同士になる。


 しかし、リュシアンは次第に黒い魔術の力を操えるようになっていく。最初は、アンジーの力になれると喜んでいた彼だが、その力は次第にコントロールできなくなっていく。彼の体は変化し、瞳は縦に長い瞳孔を持つようになり、本来は視認できないはずの魔力の流れを見ることができるようになる。

 リュシアンは、自分の体から出た魔力が、村民全員に繋がっている光景を見てしまった。

 無自覚のうちに村民全員に「魅了」の魔法をかけて、自分を受け入れるよう強制していたことに気づき、恐慌して村から逃げ出す。


 魔力を完全に操れるようになったことで完全に記憶を取り戻したリュシアン、自分が災禍の獣と呼ばれる怪物の幼体であり、成獣になると世界を滅ぼす怪物になることを思い出す。幼体の間は弱いため、他の生物に擬態して周囲の生き物を操って身を守る生態を持っていた。災禍の獣という呼び名が示す通り、本来は野生動物に紛れて幼体の時期を過ごすが、今回はたまたま村の近くで孵化し、人間の姿に擬態していたのだ。

 記憶を取り戻してもなお人間でいたいと願う彼は自分を傷つけて変化を止めようとするが、うまくいかない。


 そんな時、魔女ヴェラとアンジーが現れ、ヴェラはリュシアンを攻撃しようとするが、アンジーはリュシアンを愛していることを告白し、彼を守ろうとする。


 リュシアンは、このままでは暴れ狂いアンジーを死なせてしまうと感じた。だからこそ、アンジーに自分を殺してくれるよう懇願する。ヴェラが魔力のほぼすべてを使って一時的にリュシアンの成獣化を押しとどめ、リュシアンとアンジーは最後のわずかな時間を共に過ごす。アンジーはリュシアンと結婚式を挙げ、リュシアンは最期の時までアンジーに寄り添う。リュシアンはアンジーの腕の中で『崩壊』の魔法によって命を終え、アンジーは災禍の獣を倒して世界を救う。


 アンジーはリュシアンを忘れることなく生涯を過ごし、二人が交わした婚姻の腕輪を大切にする。リュシアンの犠牲によって世界は救われたが、アンジーにとってリュシアンとの愛は永遠に心に残るものであった。


【登場人物】

 ・アンジー:小柄な魔女。災禍の獣を倒す予言の子と呼ばれるが、おっちょこちょいでドジ。『崩壊』の魔法しかまともに使えない。


 ・ヴェラ:アンジーの師匠。厳しくも温かい指導者。


 ・リュシアン:森で倒れていた記憶喪失の美少年。後に災禍の獣の幼体であることが判明。


【なぜ執筆が止まっていたのか?】


 世界を滅ぼすという災禍の獣や、予言の子に関する設定にうまく練れていない部分があった。

 そして、シンプルに、アンジーを傷つけたことなどないリュシアンが死んでしまうのが悲しかった。一握りの救いすら用意してあげられない筆力のままでこの話を書きたくなかった。しかしこの『悲恋の末に愛する人の腕の中で亡くなる』ストーリーの流れは、シアハニー・ランデヴの原型になった。


【改善案はあるか?】


 災禍の獣の成獣がどれほど危険なものなのか、魅了の魔法にアンジーとヴェラ(特に師匠であり、災禍の獣について詳しくないとおかしいはずのヴェラ)は気づけなかったのか、予言の子アンジーだけに討伐を任せるのは無責任なのではないかという、細かいツッコミどころが解消しきれていないため、そこを解決すれば書けるはず。


 しかしこの物語の原型や魂と呼べるかもしれないものは別作品シアハニー・ランデヴに引き継がれたので、無理にこの話を書く必要もないかと思って執筆を止めていた。

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