首の縄

何度か首に縄をかけたことがある。その度に失敗しているから今こうして文を書いているのだが、そろそろ成功しても良い頃合なのではなかろうかと思う。


首に縄をかけると、ああ、今から死ねるのだとワクワクする。それから足元の台を蹴り飛ばすのだが、小学生の時分であろうか、初めの1回は縄が長すぎて簡単に足が着いてしまった。なんだが馬鹿らしくなってしまって暫くはすることも無かった。2度目は中学生の時分であったか、ふと思い立って実行したはいいものの、1度目から時間が経ってしまっているから、1度目と同じ失敗をした。なにくそ、ともう一度試みようとしたが、母が帰ってきたから断念した。3度目も中学生の時分であった。縄の長さもきちんと短くし、台もちゃんと蹴ったはずだが、気が付いたら床に寝そべっていた。括り方が悪かったのか、縄が結び目から解けていた。もう一度試みようにも、首から下が痺れて上手く動けない。小一時間寝転んでいると感覚が戻ってきたから安堵したのを覚えている。4度目は高校生の時分だ。縄の長さも括り方もきちんと確認して、いざ台を蹴り飛ばすと、また床に寝そべっている。見ると縄が真ん中でチョン切れている。その月の頭に先に逝った祖母が切ったような気がしたので、今日はやめておこうと縄をしまい込んだら、父にバレて殴り飛ばされた。全く面倒臭い親を持った。そうして今に至るのだが、次こそはと思いつつも今度は彼女とした「先に死なぬ」という約束が足枷となっている。

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