死に体
律王
痛みと血
カッターで切りつけた傷口から、鮮血がたらりと垂れる。やはりアニメのように吹き出などしないが、確実にそこに痛みが存在する。
滴る血を舐め取りながら、カッターに付いた血液を拭う。こうしておかないと、次に使う時には錆びて切れ味が悪くなる。切れ味が悪いと、切るのにも時間がかかるし、痛みも強い。傷にも残りやすくなる。傷が残れば、皆が私を変な人として見なす。実際変わっているのだから特段不便はないのだが、やはり15年間で積み上げた信頼を失うのは面倒臭い。
かつて3度母にバレたことがあるが、その度にビンタが飛んでくる。傷を作るなと叫びながら叩くのだから、言葉には何の説得力もないのだが、そんなことを言えばやはりまたビンタが飛んでくる。ただ痛いだけで流血もないから、面白くない。適当に聞き流すのが最善なのだろうと今では思う。
傷を作る私を人は皆おかしいと言う。私自身もおかしいと思う。本当ならば、こんなことをしなくとも生きていることを実感できるのであろう。しかし、私にはそれが出来ないのだ。痛みがあり、血が流れる。ああ、私は今生きているのだと実感する。傷は塞がり、瘡蓋となる。ああ、私は今も生きているのだと実感する。傷口が治ると、うっすらと跡が残る。ああ、私は今も生きてしまっているのだと実感する。こうして今でも時折傷を作る。切ってしまうとバレるから、誰も見ていないところで首に包丁を当てる。そして、首を掻き、鮮血が吹き出すのを想像する。1度はしてみたい。
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