第4話

体育の授業ぐらいでしか走ったりしないから、肩も息もあがるし、なにより体力が限界、廊下のど真ん中で膝に手を置き乱れまくった呼吸を整え、整ったと思ったら次は大量の汗が吹き出し始める。



これだから夏は嫌い。



廊下に備え付けられている教室の窓より少し大きめのそれの鍵を勢いよく下げた、が、下がらない。戸締まりの確認を先生か日直が確認したのだろう二重ロックがちゃんと掛かってある、防犯対策大事と思いつつ、この大量の汗と涼しい風を浴びたい、そして開けたらちゃんと戸締まりをするという思いも込めて解除した。



「風はない」



髪を靡かせるほどの涼しい風を期待していたのがいけなかったのかもしれないけど、風どころか無風。おまけに蝉の大合唱でより暑くなった気がした。教室にもエアコンがあるのなら廊下にもエアコンを付けて欲しい、それかせめて下敷きで団扇代わりに煽ぐことを許して欲しい。



「逃げるって最悪だよね」



汗と熱を対処しきれなかったのにきちんと施錠して偉いなと自分を褒めているところに、ど直球で鋭いモノをの突き刺す発言を横から言う人物はあの人しかいないわけで。これ、右を向いたら殺されるんじゃないかと大袈裟じゃなくて若干本当にそう思う。



「加賀くん」



きっと彼も廊下を走ってきたのだろう、白い半袖シャツをパタパタしながら服の中に空気を入れ込んでいる。かっこいいのに手まで長くて綺麗だとは罪な人だ。そんな光景を見つつ、やっぱり廊下にもエアコンを付けた方が良いと思うな、そんなどうでもいいことを加賀くんを見ながら思っていた。

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