第107話

「如月」


「はいよ?」


「一回しか言わないから覚えろよ」


「まっ、待て!無理だ!録音させてくれ」


「5秒な」




わーと叫びながら、如月はポケットを探る。


やっと見つけたらしいボイスレコーダーを俺に見せつけ、にっと笑った。




「大まかな俺らの経緯を説明する」


「わかった。録音、と。……OK」



親指を立て、俺にGOサインをだす如月を無視して話を進める。




「無名組織、で名前が通っているが、ルナでは遺伝子研究組織って呼ばれていた。


まず俺が0歳の時から始める。



0、生まれてすぐに保育器にいれられる。


1、記憶媒体として使えるやつだけを残し、他は処分。

ここで処分組になっていたはずのゼロだけが何故か生還。


2、文字や言葉の教育をされる。


3、組織への忠誠心を植え付けることと感情を抜く手段として処刑を毎日見せられる。

たまに拷問の訓練もあった。

その他にも記憶媒体と殺人者に分けるためのテストも同時進行。



4、記憶媒体にはさらに難しい内容の暗記をさせ始める。

殺人育成の方も難易度が上がる。


5、最終試験。記憶媒体が実用化される。

この半年後にゼロ以外の記憶媒体が全滅。


6、ゼロと開理が接触。取引をした。

この9日後に開理は事実上死亡した。


7〜13全員自分の仕事をする。


ちなみに13歳でこいつら6人は蜘蛛に勧誘された。

秋信と往焚がルナに入ったのは10歳。

ルナの依頼で俺と再会したのは12歳。


14、ゼロが脱走。俺に拾われる。

俺はこの数ヶ月後に湊として死亡する。


15〜16、ゼロは佐藤悠として表社会で働く。

俺は"影"として1人で行動。

秋信と往焚は俺を捜索。

蜘蛛は通常運転だったな。


17、秋信と往焚が悠を発見、誘拐。

さらにそれを俺が誘拐する。

その後色々あって遺伝子研究組織壊滅。


18が現在、だ」





ピッ、とボイスレコーダーを止め、如月が声を張り上げた。





「まてまてまてまて!

おかしい。おかしすぎるだろ」


「何が?」


「お前、18歳なのか⁉︎」


「…………」


「どう見てもこいつら18に見えないだろ!

……っていうか、この6人誘った時だって、13には見えなかったぞ!」




はぁ、とため息をつきながらカップの紅茶を飲んだ。




「あ」


「湊さん!」




如月の小さな声と、慌てた様子の秋信。

コトリとカップを置き、全員を見渡す。




「…如月。わかったか」


「…………いや、全く」


「…………お前の脳は機能してないんだな」


「えぇ⁉︎ひどっ!」



自分のカップをズイッと如月の方に押した。

半分残っているそれを見て、如月の顔が少し青ざめる。



「飲むか?」


「いっ、…いやぁ………」


「中身、当ててやるよ」


「え」



うろたえる如月と、俺を心配する秋信と往焚。

開理も険しい顔で俺を見ている。



「トリカブト」


「……………」


「残念。俺には効かない」


「は?」


「ま、このままキスすれば相手は死ぬけどな」


「うわ…」


「してやろうか?」


「いっ、いやいやいやいや!」





クスリと笑うと、俺が本気だったのを読み取ったらしい如月が青ざめる。

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