Awareness

第105話

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ラウンジに戻った。


いくらもう話さなくてもいいと言っても、俺にはこいつらを守ってくれと頼まれた責任がある。




それでも話さなければならないこともあるだろう。

そのため、少し休ませてもらうことにして座っている。




「あれ?秋信さん、首どうしたんですの?」


「首?何か付いてますか?」


「なんか、す、すごい、色に…」


「あ」




秋信がバッと首を隠した。

往焚が陰でクスクスと笑っている。


その声を聞いて晶が秋信に近寄った。



「…もしかして、僕?…ご、ごめんね」


「あ、あぁ、違いますよ。これは…

これは、往焚さんのせいで湊さんがつけたものなので」


「「はい?」」


「あはははははははははっ!!!」


「……往焚さん、笑わないでください。

元凶はあなたです」


「あはははははははははははははっ!!!」




往焚の笑い声で全員が秋信に近寄ってきた。



「秋信、どうした?怪我でもしてるのか?」


「なんだなんだー?首?えろーい!なになに?

往焚ちゃんとラブラブしたのか⁉︎」


「開理さん、大丈夫ですよ。


………如月さん。そのままじっとしていてください。

その目をえぐり出してあげます」


「いーーーやーーーー!!!」




左手で首元を抑え、秋信は必死で隠していた。

着ている服の第一ボタンまで締めたらしいが、隠せていなかったらしい。



「秋信さん…。意外にエロいな」


「……うん、エロい」


「あの、そこの兄妹。ボソッと言うのやめていただけますか?」


「…ボソッとじゃなきゃいいのか?」


「アーキーノーサーン!エーローイー!」


「やめてくださいぃぃぃ!!!」




みんなの笑い声がラウンジに響く。



…なんて馬鹿な会話なんだ。



「え…。いいなぁ、私も欲しい…」


《え》




全員声も顔もそろって蒼を見た。

こいつの清楚系キャラはもう消えたな。



「わ、私にもつけてください!」


「蒼⁉︎やめなさい!」



俺の方に目を輝かせて近寄ってくる蒼を、るみが必死で止める。



「いーやー!つけてもらうの!

はーなーしーてー!!」


「蒼!やめなさい!蒼ー!」






「……蒼ちゃん、あんな性格だったか?」


「如月さん。部下の管理はちゃんとしておいてください」


「い、いや…。あれ?蒼ちゃん…あれ?」







「あははははははははははははははっ!!!」


「や、往焚さん大丈夫?笑いすぎだよ」


「だって、秋信…ブハッ!」


「いや、確かに僕も笑えるけど…ブフッ」








「……全員狂ったな」


「……ね。すごいね」







もはや全員おかしい。

何がおかしいって、もう全ておかしい。





「湊」



俺の隣に腰掛け、開理が俺を見つめる。




「秋信に何したんだ?」


「…………俺は悪くない」


「は?」


「……どうやってつけてんのか聞かれて、無理やりつけさせられただけだ」


「なんの話……あぁ…。あははっ!

そりゃ、ご愁傷様だったなぁ!」


「………もう勘弁」


「あははっ!」





お前まで笑うのかよ。





部屋を笑顔が包む。

もしかすると、わざと明るくしているのかもしれない。



俺が暗くしたからだろうか。





……いや。本気で頭がおかしいだけかもしれない。







「湊さんっ!!!」


「………なんだ」


「つ、つけてください!」


「蒼!やめなさい!」



「…………却下」


「えぇ!なんでですかぁ!」





俺の下までやっとたどり着いたらしい蒼が声を高らかに頼んでくる。

それを必死で止める るみと、横で笑う開理。





ほんの少し笑えた。

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