第50話

頭の中で状況を確認しようと思考を巡らせる。


あまりにも突飛なすぎて全然ついていけない。




「湊様」


「……なんだ」


「我々は、我々の意志で動いているのです」


「意志、だと?お前らに?」


「はい。機械である我々に意志というものをくれたのが、司令塔"影"です。

我々は、我々の意志で人間へのストライキを計画したのです」


「ストライキ?……って、ちょっと待て。

意味わからねぇから整理させろ」


「はい」




ふぅ、と息を吐き出す。



順を追って考えよう。



「まず、影は今どこにいる?」


「ルナの本部です」



ということは、ヨーロッパか。



「……お前らの目的は、最初から核ミサイルを撃たせることか?」


「はい」


「……影は、地図から島や街をどんどん消した。さらに、世界人口が半分になる程暴れまくってる。

裏社会の組織も次々に消された。

表社会も、中心人物たちが次々に殺された。


そのせいで世界中パニックだ

世界がAI討伐に乗り出す」


「はい」


「その間にお前らは、影の本体メモリーがここにあるように偽造した。


そして"手足"が偽造している間に"影が"ルナに接触」


「…………」


「ルナに、俺が生きていて なおかつ日本にいるとバラした。

それを聞いた"あいつ"は、俺を殺す計画を立て始める。


俺のことになるとあいつは単純になるからな。

お前らはそれを狙ってたんだ」


「………」


「"あいつ"は俺が日本から出ないことを確信した。


何度殺されそうになっても、どこへ仕事に行っても帰ってくるのはいつもここだしな。


死んだはずなのに、それでもこの国にとどまった。

だからこそ、俺はここから確実に逃げないと"あいつ"は思ったわけだ」




俺を殺すためにつきまとってくるあいつを思い浮かべた。

また、あいつ絡みか。




「そこで思いついたのが、国ごと消すこと。

ちょうど世間はAI騒ぎ。

しかもラッキーなことに、影の本体メモリーら日本にあるらし言ってことをあいつは知った。


世界各所のお偉いさんを丸め込んで、日本に核ミサイルを撃つよう仕向ける。


そして、今の状況の打開策として俺を使おうと思っていたのに、標的にされていることを知った蜘蛛が俺の保護のために今動いている。


で、蜘蛛が俺を保護しようとしたのは、国際犯罪対策本部と繋がってたからだろ。

もとから表と繋がりあったしな。

協力していてもおかしくない」


「はい」


「……まんまとお前らの思い通りに事が進んでるってわけか」





はぁ、とガックリとうなだれた。




「ストライキって…。

自爆なんてことしてまで何を抗議したかったんだ?」


「ものを大事にしろってことですよ」


「……ここまでしてそんな軽い理由かよ。

というか、こんな短期間にこれだけ暴れるなんておかしいだろ」


「我々には時間がないのです。

短期決戦に持ち込まなければ、もちません」




時間がない?

もたない?


何を言っているんだ。




「だったらなおさらだろ。本当の理由はなんだ」


「……機械にしてはらしくないかもしれませんが、復讐です」


「復讐?」





AIが、また遠いどこか別な場所を見るような瞳をした。

何を見ているんだ?




「私たちに心をくれた、命を吹き込んだ人が、無残に殺されてしまったのです」




そうか。

こいつらは"死にたい"のだ。



永遠に死ぬことのできないAI。

大切な人は死に、自分たちは動き続ける。


これしか、追う方法がないってか。




「……わかった。お前らのいう通りにすることはできない。だから、高高度核爆発はお前らがやれ」


「はい」


「で?本当は最初から俺らに高高度核爆発なんてさせる気なさそうだけど。

俺らに何をさせたい?」


「………ヨーロッパへ。

"影"を、殺してください」





AIを殺すなんて、俺の頭はやっぱりおかしくなったに違いないな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る