第46話

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「…と、さん!……さん!……湊さん!」





ハッと目を覚ました時に目に飛び込んできたのは、青い顔をした往焚だった。



「大丈夫かよ」


「……あぁ。……今何時だ」


「まだ2時。帰ってきたのは18時で、休むことになったのは19時ごろって秋信が言ってたけど?」




結構寝てたのか。


体を起こすが、頭がズキンと痛んでうずくまってしまう。

長時間眠れたと思う日は、大抵こんな風に夢見が悪いせいで寝た気がしない。




「本当に大丈夫かよっ⁉︎

すげぇ叫び声聞こえたから、入ってきちまったんだけど…」


「……叫び、声?」


「魘されてたぜ?何回呼んでも起きねぇし」



「せっかく休んでたのに起こしたか。

悪いな」


「あ…いや、それはどうでもいーよ」




ベッドから出て、適当な服に着替えようと服を脱ぐ。




少し外に出たい気分だった。





「……往焚。秋信は?」


「なんか、俺に任せるって」


「……あぁ、なるほど」




あいつ…拗ねたな。

相変わらず往焚のことになると気が弱くなる。



「往焚」


「はい」


「少し外に出る」


「了解」


「秋信、慰めとけ」


「は?」




ぽかん、とした表情の往焚を置いて部屋を出る。


そのままリビングに行き、コップに水を入れて飲み干した。






「………こんな時に、何だってあんな夢」






惨い(むご)ものもエグいものもグロいものも、見れるもの全て見尽くしてきたつもりだ。



3歳ごろに、組織に逆らわないよう教育された。

その時見せられたのは、"処刑"。


言うことを聞かなければこうなる、と言う脅しだ。




ありとあらゆる処刑を見た。



愛し合っているもの同士を殺し合わせるもの。


少しずつ皮を剥ぎ、剥ぎ終わったら四肢を切り落としていくもの。


縛られた状態で薬漬けにされ、じわじわ殺されていくもの。


死なない程度にひたすら拷問を受け、最終的には生きたまま解剖されるもの。





他にもたくさん見ていたが、1番悲惨なものがあった。




あれは、人間のすることではない。





彼は、体の何一つ残らず消えた。

それなのに、満たされたように笑っていた。





その処刑だけ防音ガラス越しに見たので、声は聞こえなかった。

それでも、口の動きで彼が最後に何と言ったかはわかった。





ーーーー君と空が見たかった





誰に言ったのかはわからない。

後悔の言葉のはずなのに、満ち足りた笑顔だった。




「クソッ」





ガン、と拳を壁に打ち付ける。

カタカタと震えが止まらない。











ーーーー悠威













ハッと顔を上げた。





でも、そこには誰もいなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る