レオくんのひとりごと 2

昨日のアルヴィンは可愛かったな。

 翌朝、上機嫌で登校して靴を替えていたら、学園長が声をかけてきた。

「レオくん、マイカちゃん怒ってたよ?」

「知るか」

一刀両断して立ち去ろうとしたら、彼がしがみついてきた。

「待ってよー! じいじ嫌いって言われちゃったあ」

「離せ、気持ち悪い」

凍らせてやろうかと思っていたら、アルヴィンがやってきた。彼は学園長を見てハッとする。そわそわしながらノートを取り出し、サインをねだりだした。レオは面白くない気分でそれを見ていた。あんなじいさんの何がいいのだろう。アルヴィンは年上が好きなのだろうか? クロフォードにもやけに懐いているし。

 アルヴィンは礼を言って去っていく。学園長はニコニコしながらアルヴィンを見送った。

「やー、悪い評判を聞いていたが、素直で可愛らしい子じゃないか」

「アルヴィンに手を出したら殺す」

「いや孫世代だよ? ないない」

 しかし見た目は悪くないし、アルヴィンに好かれている。じいさんじゃなかったら排除しておくところだが、そんな精力もなさそうなのでやめておいた。歩き出したら、学園長がねえ、と声をかけてきた。振り向くと、彼はほがらかな口調で尋ねてきた。

「レオくん、学園生活楽しい?」

「──つまらなかったらやめてる」

 よかったね、と学園長が笑った。ここに来なければ、アルヴィンには出会わなかった。だからこいつには感謝している。

 レオはずっと、狭くて冷たい世界で生きてきた。他人などどうでもいいと思っていたのだ。歩いて行った廊下の先では、アルヴィンが待っていた。なんの話をしていたのかと尋ねられて、別に、と答える。握りしめた、彼の手は暖かかった。顔を赤らめたアルヴィンを見て、レオは微笑んだ。──広い世界には、何もないと思っていた。だけどその先には、光が待っていた。アルヴィンの髪に日の光が当たり、きらきらと輝いていた。


 おわり。

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悪役令息だけど攻略対象者が迫ってくる。 deruta6 @satosan

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