ダンジョンの波に呑まれて

クララ

ダンジョンへの第1歩編

第1話 ダンジョンへの第1歩①

いつものと変わらない日常。それこそが平静というものに間違いない。いつも通りのテレビ番組を見ながら、いつも通りの昼ご飯を、いつも通りの椅子に座って食べる。そんな日常を謳歌している俺こと出月来宝いてづきらいほうこそが人生というゲームの勝者であることは疑いがない。


壁に掛けられたモデルガンを眺めながら横目にテレビを見る。どうやら最近はダンジョンとやらが世間を騒がしているようだが、俺には関係のないことだ。俺にはこの部屋とモデルガン、そして週に一回のサバゲーがあれば十分だ。


その時突然インターホンが鳴る。


「最高の昼時だっていうのに邪魔してくるような無粋な奴はどこのどいつだ?」


俺がドアスコープをのぞき込むとそこにいたのは明らかに陽キャなことがわかる髪色でこちらと目を合わせてくる馬鹿。


「やっほーー」


手を振る馬鹿を見なかったことにした俺はそっとドアスコープを覗くのをやめるとそのまま先ほどまで座っていた椅子に戻っていつも通りの日々を送り始めようとする。そうして椅子に腰かけようとした瞬間今度はインターホンが連続で鳴らされ、騒音がまき散らされる。


俺はため息を吐くとドアまで行って、開ける。


「今日はどうしたんだ?言っておくが何も用事がないとか抜かしたらドアは閉めるぞ光狩みつがり


「まさか俺が用もないのにここに来るわけないでしょ?」


「そういってお前は前回も前々回もその前も用事がなかっただろうが!」


「とにかく、そんな昔のことはどうでもよくて今日は用事があってきたんだって」


「なら早く要件を言え。お前がいると俺の日常が平静から遠のく」


「それじゃ、これから一緒にダンジョンに行かない?」


俺は奴がそう言った瞬間にドアをぴしゃりと閉めて、先ほど同じようにいつも通りの日々へと戻っていく。何かドアの外から喚いている声が聞こえてくるのが非常に不愉快なのでノイズキャンセリングがついたイヤホンを着けて音をシャットアウトする。


俺がイヤホンを着けてからしばらくするとなぜか自分の後ろに人が立っているような気配を感じる。振り返るとそこには先ほど扉の外で馬鹿なこと言っていたので締め出したはずの馬鹿がいた。


「お前、、、なんで俺の家の中にいる?」


俺がイヤホンを取り外しながら言うと、奴はさも当然のことかのように


「だって、合鍵持ってるもん」


と抜かし始めた。


「いや、俺はお前にこの家の合鍵を渡していないはずだが?」


「そんなの自分で作ったにきまってるでしょ。鍵の形なんて一回見たら覚えられるに決まってんじゃん」


「っち、、、これだから偶にいる化け物は嫌いなんだ」


「というかそんなことはどうでもよくてダンジョンに行こ!」


「断る。なんでそんなことをやらなきゃならんのか俺にはわからん」


「だってお金ないでしょ?来宝無職なんだから働かなきゃ」


「うぐっ、、、だっ、だからってダンジョンじゃなくてもいいだろ。別に今の時代家でできる仕事だって星の数ほどある」


「そんなこと言ってどうせ来宝家じゃ仕事しないでしょ」


「うぐっ、、、」


「そもそも家でちゃんと仕事ができるような人ならこんな生活してないから」


「ともかく、ダンジョンには行かん!絶対にだ!」


「そんな来宝君に耳よりの情報があるんだよね」


「、、、なんだ?」


光狩はわざわざ俺の耳元で囁くように言う。


「実はダンジョンの中って実銃が撃てるんだよね」


「、、、マジか、、、」


「マジよ。大真面目」


「、、、一番近場にあるダンジョンはどこだ?」


「うーーん、ここからだと蒲田にあるダンジョンが一番近いかな」


「それならすぐに行くぞ!実銃が俺を待ってる」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る