第19話 事件の真相
アイシアはフウッとため息をつくと、晴れ晴れとした顔になり、クルスに話し始める。
「もう、何を言っても無駄みたいね。そうよ、私が三人を殺した犯人よ」
一同が驚きの顔で、アイシアを見つめる。俺もどうしていいのか分からず、ただアイシアとクルスを見ている。
「私が犯人じゃないかと、いつから疑っていたの? 探偵さん」
アイシアはクルスに微笑み、ゆっくりとしゃべり掛ける。
「エミノールさんが殺された時ですね。それまでは、あなたが犯人だと分かりませんでした。実は、アイシアさんに何点か謝らないといけません。あなたの自供を引き出す為に、嘘の仕掛けをいくつか仕込んでました」
クルスもアイシアが自供した為に、落ち着いて話をしているようだ。そして、皆に説明をするのも兼ねて、話を続ける。
「エミノールさん殺害の時のアリバイの事なんですが、実はアリバイがなかったのは、アイシアさん。あなただけだったんです」
アイシアの目が大きく見開く。そして、もう一人のアリバイのなかったはずのレミカをキッと睨み付ける。
「ゴメンなさい、アイシアさん。私、嘘を付いてました。エミノールさんが殺された時刻、私はクルスさんと一緒に居たんです」
レミカが泣きそうな顔でアイシアに頭を下げている。俺は呆気にとられて、心の中で反論する。
いやいや、それはないでしょ? その時間、クルスと一緒に居たのは俺だし。君、居なかったし。
「サークさん。申し訳ないです。あの時、実はレミカさんが一人で居るの恐いっていうものですから、サークさんの部屋に一緒に来てもらってたんです」
「いや、だからレミカさんは居なかったって……」
「実は、サークさんの目を盗んで、サークさんの部屋のクローゼットの中に隠れてもらってました」
衝撃の事実が俺を襲う。
あの時、女の子が俺の部屋のクローゼットの中に居ただと? 俺に内緒で? 何で?
「つまりあの時、エミノールさんを殺害出来たのは、アイシアさん一人だけだったんです」
クルスはアイシアの様子をうかがいながら、続けている。アイシアは軽く微笑みながら、クルスに応える。
「じゃあ、あの告発文も?」
「はい、もちろんニセモノです。エミノールさんはそんな物、残していませんでした」
クルスもあっけらかんと応える。アイシアは目を閉じ、うつむく。
「何で、何でアイシアさん。こんな殺人事件起こしたんだよ? 君みたいなAランクの美女が……」
俺は無意識的に言葉を発していた。抑えきれない感情からの行動だった。
「復讐よ。私の恋人は、あのベルンとマルノオに利用されて、殺されたのよ」
微笑んでいたアイシアが怒りの表情に変わる。
「例の味方殺しの件ですか? その犠牲者の中にアイシアさんの恋人が……」
クルスは同情をするような目で、アイシアに尋ねる。
「そうよ、許せなかった……。お金やアイテムの為に彼の命を奪ったアイツらを。そして、何事もなく、平気な顔をして、次のターゲットを狙って笑っているアイツらを……」
アイシアは悔しそうな顔をし、うつむいて泣いている。クルスも悲しそうな目で彼女を見ている。そして、クルスはゆっくりとアイシアに優しく話し掛ける。
「このお泊り合コンを企画、発案したのもアイシアさんだったんですね?」
「そうよ。あの二人を殺す舞台を作る為に、私がギルドに匿名で提案したのよ。ギルドに案が通ってからは、殺害する計画をじっくり練ったわ。確実に殺す為に」
「じゃあ、ベルンさん殺害の時は、サークさんが話した通りなんですか?」
「えぇ、私が一番最初に動いて、ベルンのグラスに毒を入れたの。お爺さんとお婆さんは料理の支度に追われて見えてなかったし、他の人達もまだ席から立ったばかりだったから死角になってたのよ」
「第二の殺人、マルノオさん殺しの時は?」
「トリックは、もう分かってるんでしょ? そう、三階の空き部屋からマルノオの部屋に毒を垂らしたのよ。もちろん、部屋の割り当てをしたのも私。だから、マルノオの部屋の上を空き部屋にして、穴をあらかじめ開けておいて準備していたのよ」
俺は愕然として、アイシアを見ている。
あんなカワイイ子が、あんな綺麗な子が殺人犯だなんて。信じられない。信じたくない。
俺の気持ちとは裏腹に、クルスとアイシアは事件の真相の続きを語り始める。
「エミノールさんを殺したのはなぜですか? 彼女は殺す予定になかったはず」
「そうね。エミノールさんは確かに殺す予定はなかったわ。でも、彼女、私がベルンに毒を入れた事に気付いて、私を脅して来たのよ。バラされたくなかったら、金品をよこせと。ベルンやマルノオとやってる事が同じだと思ったら、腹が立っちゃって。だから、殺したの。台所のナイフを使って」
アイシアは淡々と応えている。三件の殺人をした事に後悔はないような、そんな素振りだった。
「クルスさん、もう逃げも隠れもしないわ。この島を出たら、ちゃんと罪は償うわ。あなた達にも危害は加えない」
アイシアはそう言うと、静かに目を瞑り、一筋の涙を流した。
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