第15話 それ、死亡フラグが立ってますよ

 俺はエミノールの部屋を後にした。部屋の外では、他のみんなが心配そうに俺を見ていた。


 これは俺の生死の心配ではなく、エミノールが犯人なのかどうかという方の心配だと俺は気付き、少し心が傷付いた。


「サークさん、どうだったんですか? エミノールさんは、毒を持ってなかったんですか?」


 クルスはかなり緊張した面持ちで、俺に近付いて来る。俺は側に来た相棒に感じた事を伝える。


「彼女は毒を持ってなかった。彼女は恐らく、白だ。違う意味では、黒だったんだが。彼女は放っておいても大丈夫そうだ。それよりも、クルス。殺されたあの二人の過去を調べたい」


「どういう事ですか? 何か分かった事があるんですか?」


 他のみんなも、俺の言葉を注意深く聞いている。俺はみんなの表情を見ながら、話を続ける。


「殺された二人、かなり悪い噂があったみたいだ。怨恨の線で調べてくれ」


「サークさん。どうしたんですか? 部屋から出た途端、人が変わったみたいですよ。何かクールで頼もしいです」


「もう、これ以上、殺される人は見たくないんだ。頼むぞ。相棒」


 俺はそう言いながら、階段を下りて行く。チラリとアイシアの顔が目に入る。


 ゴメンなさい。アイシアさん。俺はエミノールさんのモノになりました。どうやら、あなたとはお付き合い出来ないみたいです。サヨナラ。


 俺はそう思いながら、リビングを調べ始める。


 俺が謎を解く。そして、エミノールさんを朝まで守るんだ。


 また、エロい事を考えてしまう。ダメだ。それでは、いけない。エミノールさんにも言われたではないか。女の子にガツガツしたら、モテないと。


 俺は冷静になり、最初のベルン殺人の時の事を思い出す。


 確か、乾杯をした後、ベルンは苦しみ出して、死んだんだな。毒の入ったビアー酒を飲んで。


 ビアー酒はグラスに注がれていた。という事は、ボトルに最初から毒が盛られたのか、直接グラスに毒を盛ったのか?


 フッ、分からん。いや、俺、剣士だし。探偵じゃねぇし。頭使うの苦手だし。いや、でも頭突きは得意かな? 今、それ関係ねぇし。


 考えてはみたが、それが不得意である事に俺は気付く。そして、頭を使い過ぎて疲れたので、再びクルスの所へ向かう。


 クルスは俺の意図を理解したらしく、全員から詳しく聞き込み調査をしてくれたみたいだ。俺はクルスを自分の部屋に呼んで、二人だけで事件について話し合う事にした。


「どうだ、クルス? 何か分かった事はあるか?」


「えぇ、色々と分かりましたよ。やっぱり、殺されたベルンさんとマルノオさんは、ギルド内でもかなり評判が悪かったみたいですね。同じパーティーを組んだ仲間が何人も、ダンジョンから帰って来なかったらしいです。これは、レミカさんからの情報です」


「アイツらが仲間を殺してるんじゃないのかって、噂になってたんだろ?」


「さすが、サークさん。その話を誰から?」


「エミノールさんだ。恐らく、ダンジョンで得たアイテムや金品を仲間に分配するのがイヤになって、殺してたんじゃないのか?」


「なるほど。という事は、この殺人事件の犯人は、あの二人が殺したと思われる仲間の家族や恋人、友人の可能性が高いと推測されますね」


 クルスはウンウンと頷いている。


「サークさん、これはジサンさんとバサンさんの話なんですが、どうもこのお泊り合コン、裏で計画を練っていた発案者がいるみたいです」


「どういう事だ?」


「つまり、このエロコンパ島で、お泊り合コンを発案して、ギルドに計画を打診した人物がいるみたいです。そう、ベルンさんやマルノオさんと言ったメンバーを決めて、この建物の部屋割りまで事細かく操作していた人物が。ジサンさんとバサンさんはギルドの方から、発案者の計画案通りに進行してくれと頼まれたらしいです」


「え、そんな事が出来るのかよ? 俺なら、ギルドに美女大勢と俺一人のお泊りハーレム合コンの企画を発案するけどな」


「そんな合コン、美女側が誰も集まらないから、企画だおれになりますね。では、話を戻しますよ。つまり、この殺人は、かなり綿密に計画されたものであるという事なんですよ」


「発案者が殺人事件の犯人なのか? そして、その発案者は、このお泊り合コンのメンバー?」


「その通りです。ターゲットはベルンさんとマルノオさんの二人。そして、犯人がそこに加わるワケです。僕やサークさんは、定員八名になる為の人数合わせみたいな感じです」


「クルス、お前、犯人の目星は付いているのか?」


「いえ、まだ……。マルノオさん殺害は、誰にでも可能でした。あの床のトリックさえ知っていればですけど。しかし、ベルンさん殺害は犯人が絞られます。ビアー酒のボトルには、毒は入ってなかった。直接、グラスに毒を入れる事が出来た人物という事になりますからね」


「エミノールさんが、犯人が分かったかもしれないと言っていたぞ」


「え、サークさん、それが誰か聞いてますか?」


「いや、聞きそびれた。それどころじゃなかったんだよ。エミノールさんが俺と朝まで、二人きりで居たいなんて言うから、頭の中がその事でいっぱいで」


「マズいです、サークさん。それ、死亡フラグが立っちゃってますよ。犯人が誰か気付き掛けて、他の人に言わないパターンは、王道です」


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