第12話 密室殺人って何ッスか?
全員の視線が、ベッドの上のマルノオに集まる。クルスがベッドにゆっくりと歩み寄り、マルノオの脈や呼吸を調べている。そして、クルスはうつむき、目を閉じる。
「ダメです……。死んでます……」
「いやああああ」
クルスのその言葉に反応して、レミカが悲鳴を上げ、意識を失う。倒れそうになったレミカを、ラウナが受け止める。
まさか、俺が蹴破ったドアに当たり、マルノオが死んでしまったのか? どうしよう? 女の子に嫌われちゃうよぉ。
俺は心配になり、それとなくクルスに聞いてみる。
「何で、マルノオの奴は死んだんだ? もしかしての話なんだけど、俺とか関係したり……する?」
「いえ、サークさんは関係ありません。マルノオさんの身体から、猛毒のシサンカリの甘い匂いがします。ベルンさんと同じ死に方をしています。彼も殺された可能性があります」
クルスの言葉で、俺はホッと胸を撫で下ろす。
良かった。俺が原因で死んでなくて。これで、合コンを続けられるぞ。わーい、わーい。
しかし、俺以外の全員は愕然として、言葉を失っている。
それは、そうだ。連続殺人事件になったのだ。
次に殺されるのは自分かもしれないと、全員思っている。俺以外の人間は恐いに決まっている。俺は強過ぎるから、殺される心配ないんだけど。
「サークさん、これは、密室殺人ですよ」
クルスが振り返り、俺に意見を求めて来る。俺は、密室殺人の意味が分からなかったので、聞いてなかった振りをする。女の子にバカだと思われたら、モテないからだ。
「サークさん、意味が分からなかったからって、無視しないで下さい。この殺人は密室、つまり、部屋の外から出入り出来ない状態で、中の人間が殺されているんです」
「ほぅ、それは不思議だな? と言うことは自殺か、病気で死んだんだんじゃねぇの?」
「顔や枕元から、毒の甘い匂いがするんです。まず、病気じゃないですし、自殺と考えるのは不自然です」
「じゃあ、どうやって殺されたんだよ?」
「それが、分からないから苦労してるんです」
そう言って、クルスは腕組みをして考え始める。
イケメン二人が死んだ。と言うことは、この合コンは男二名、女性四名の合コンになったのだ。いかにして、この合コンで彼女を作るか、俺も腕組みをし、考え込む。
「誰なのよ? 殺人犯は? もうイヤ。私、部屋から出ない」
エミノールが半狂乱になって、慌てて三階への階段を登って行く。アイシアも顔が真っ青になって、その場に座り込む。
「僕とサークさんで、この現場を調べます。皆さんは一階のリビングで休んでいて下さい」
クルスはそう叫ぶと、部屋の中を再び調べ始める。意識を失っているレミカはラウナが背負い、一緒に一階へと下りて行く。意気消沈しているアイシアは、ジサンとバサンと共にフラフラと階段を下りて行く。
アイシアさん、スイマセン。弟子がどうしても俺の力を借りたいと言うので、一緒に居てあげられないんです。その代わり、今夜は朝まで一緒に居ましょう。
俺がエロい事を妄想していると、クルスはしきりに上を眺めてウロウロしている。
そして、マルノオの死んでいるベッドの上の辺りをじっと見ている。クルスは首を傾げ、部屋の外で様子を見ている俺に話し掛ける。
「サークさん。ジサンさんを呼んでもらってもいいですか?」
「あぁ、いいよ」
俺は言われた通り、ジサンをリビングから呼んで来る。ジサンは不安そうな顔で、クルスの元へと駆け寄る。
「クルス様、どうかされましたか?」
「ジサンさん、この建物にハシゴとか有りますか? 有れば貸して頂きたいのですが……」
「ございます。ただ今、お持ち致します」
ジサンはバタバタと一階へと慌ただしく下りて行く。しばらくすると、彼はハシゴを抱え、二階へと戻って来る。
「サークさん。マルノオさんの遺体とベッドを動かします。手伝って下さい」
クルスに言われるがままに、俺はベッドとマルノオの遺体をクルスと共に部屋の端へと動かす。そして、クルスはベッドがあった位置にハシゴを設置し、天井をジロジロと見回す。
よく見れば、天井の匂いを嗅いだり、コンコンと天井を叩いたりしている。そして、首を傾げ、もう一度同じ事を何度も繰り返す。
それ、何の趣味ですか?
質問してみようかなと思ったが、クルスに怒られそうなので、俺は止める事にした。すると、クルスがハシゴから下りて来て、フゥとタメ息をつく。そして、再びジサンを呼んで、歩み寄って行く。
「三階で確かめたい事があるんですけど、この上の部屋は誰が使っているんですか?」
「えーと、確か空き部屋になっていたと思いますけど……」
「確かですか?」
「えぇ、間違いないと思います」
クルスはその言葉を聞き、慌てて三階へと階段を登って行く。俺もそれを見て、慌ててクルスに付いて行く。
あれ? 俺、クルスの助手みたいになっているぞ。俺が師匠で、アイツが弟子だよな。アイツのやっている事がまるで分からない。うーん、これって女の子にモテるのかな?
俺がそんな風に思っていると、マルノオの真上の部屋へとやって来る。この部屋は誰も使ってないと、さっきジサンが言っていたので、俺とクルスは遠慮なく、部屋に入る。
クルスは入ったと同時に、床をジロジロ見回している。そして、何か見つけたのか興奮した表情になり、俺の方に顔を向ける。
「サークさん、密室殺人のトリックが分かりました。あとは誰が犯人なのか特定するだけです」
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