第9話 殺人犯より恐いもの
俺達は外部犯捜索チームを二班に分け、このエロコンパ島を調べ始める。
第一班は、俺とクルス、アイシアとレミカだ。第二班は、残りのエミノール、ラウナ、マルノオ、そして、ジサンとバサンだ。
ホントは二人一組くらいで探したら効率が良かったのだが、もし外部犯と接触した場合、二人では対処出来ない可能性があったからそのようになったらしい。
それにペアの場合、相方が殺人犯だった場合、非常に危険な状況になる、と、クルスが説明していた。
ハッキリ言おう。
俺が一対一で、殺人犯と対峙したとしても負ける可能性は全くないのだ。なぜなら、俺は大魔王も無傷で、しかもたった一撃で倒した程の強さなのだ。正直、殺人犯など一つも恐くはない。
俺が恐れるものは、女の子から嫌われる事であり、女の子からモテない事なのだ。
つまり、俺からしたら、殺人犯を捕まえる事より、このお泊り合コンで、いかに女の子と仲良くなり、彼女にするかの事の方が重要案件なのだ。
だからこそ、このお泊り合コンの根幹を崩そうとしている殺人犯に、俺は怒りの感情を抱いていた。
俺のラブラブチャンスを邪魔する奴は許さねぇと。
「アイシアさんは、ホントにこの島に殺人犯が隠れていると思いますか?」
俺は隣にいる美女剣士に声を掛ける。もちろん、この子の隣にいる理由、そして、声を掛けた理由は一つしかない。俺は彼女と仲良くなりたいのだ。
「分かりません……。でも、外部犯が居ない場合、私達の中に犯人がいる事になるんですよね? どちらにしても、恐い状況なので、一刻も早く犯人が捕まる事を願っています」
アイシアは怯えた顔で俺に応える。
あぁ、俺は君の怯えた顔よりも、笑顔の方が見たいよ。すぐに俺が君を笑顔に変えてみせるよ。
俺は妄想しながら、アイシアを見つめる。
「安心して下さい。もし仮に殺人犯が居ても、俺がアイシアさんをお守りしますから」
俺は男らしい顔でアイシアにアピールする。しかし、アイシアは引き気味な顔をしている。
焦るな、サーク。攻め過ぎは嫌われるぞ。
俺は冷静になる為に、深呼吸をする。
前方を歩くクルスとレミカが見える。落ち込んでいるレミカを元気付けようと、クルスが果敢に話し掛けている。
おぉ、弟子よ。
その行動は、優しさなのか、下心なのか、俺にはよく分からないが、頑張れ。
好きな女の子に一生懸命、話し掛けている友に、俺は無言でエールを送る。
俺達四人は建物の裏手付近を重点的に調べる。人が潜める場所や、隠れられそうな建物はないか、周りをキョロキョロと見回しながら、歩いて行く。
しかし、それらしい人影はない。俺達以外には、この島では人の気配すらしない。やはり、誰も居ないんじゃないのか、そんな結論に達して来る。
俺は再び、アイシアを見る。アイシアは何か考え事をしているような、そんな顔をしている。
「アイシアさんは、何でこの合コンに参加したんですか?」
俺は再び、アイシアに質問を投げ掛けてみる。
「え……。そうですね。独り身になっちゃったので、新しいパートナーを探そうと思って参加したんです。サークさんは、どうしてこの合コンに参加したんですか?」
「え……。俺もですよ。俺も、独り身になっちゃったので、パートナーを探しに来たんです。アイシアさんと同じですね」
俺は照れながら、アイシアに応える。
ハッキリ言おう。
俺は今までパートナーなど持った事はない。あぁ、そうだ。モテた事がない人間なのだ。だから、見栄を張った。そう、嘘を付いたのだ。居たように見せ掛けたのだ。悪いか? 悪いのか?
モテている人間は、情けないとか卑怯などと言うかもしれない。しかしだ。しかしなのだ。お前達、モテている人間には、モテない人間の気持ちなど到底、分からないのだ。
俺は必死だ。モテたいのだ。彼女が欲しいのだ。この合コンに全力を注いでいるのだ。殺人事件など、どうでもいい。早く合コンを再開して、美女を恋人にしたい。それだけだ。
アイシアがうつむき、悲しそうな顔を一瞬見せる。俺はまた、自分が失言をしたのかと心配になる。すると、アイシアは我に返ったような顔になり、俺に笑顔を見せ、言葉を返して来る。
「そうなんですね。お互い、いい出会いがあればいいですね。ところで、サークさんは、クルスさんとは同じパーティーなんですか? スゴく仲が良さそうに見えるので、そうかなって思って」
「いえ、彼とはパーティーは組んだ事はないですね。クルスは俺の弟子なんです」
「え、意外です。弟子なんですか?」
「は、はい。冒険とか、戦闘などを彼に教えています。そして、弟子でもあり、友達でもある。そんな感じの関係です」
俺は、笑ってごまかす。近くにいるクルスが苦笑いをして、俺を横目に見ている。
俺は嘘を付いた。コンパの弟子とは、女の子の前では、口が裂けても言えないからだ。
「素敵な関係ですね」
アイシアがキラキラした目で俺を見てくる。
いやぁ、そんな目で見られると照れちゃいますよ。今回の合コンはいけるかもと、俺は手応えを感じる。
「サークさん、ちょっといいですか?」
クルスが会話の切れ目のタイミングを見計らって、俺に耳打ちして来る。
「何だよ? 恋愛相談か?」
「違いますよ。やはり、この島に隠れている人間は居ないようですね」
「え、てことは?」
「そうです。やはり、合コンメンバーに殺人犯が居る可能性が高いです。しかも、クローズドサークルです。通常だと、第二、第三の殺人が起こります」
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