第7話 イケメンよりもモテる男の特徴
全員の自己紹介が終わり、席では皆が軽い雑談を始めている。隣の台所の方では、料理が出来たらしく、ジサンとバサンが慌ただしくしている。
そんな様子を美女剣士アイシアが心配そうに見ている。そんなアイシアを俺はカワイイなと思いながら、じっと見ている。
「スミマセン、ちょっと良いですか? 料理を作って運んで来るのが、お爺さんとお婆さんの二人だけなので、全員でお手伝いしませんか? 八人分もあるので……」
アイシアはそう言うと、席を立ち、台所の方へと向かう。男気のある女性ラウナも、それを見て立ち上がり、彼女を追い掛けて行く。
気配りのある男、気の使える男、そしてフットワークの軽い男はモテるのだ。これは、合コンだけではない。恋愛においての話でもだ。
よし、アイシアの好感度を上げる為に俺も手伝いに行こう。
俺もすぐさま席を立ち、台所へと手伝いに向かう。隣のクルスも同時に席を立っている。レミカとエミノールも同様に席を立ち、台所へ移動している。
席に座って、手伝いをしない事を決め込んでいるのは、どうやらイケメンのベルンとマルノオの二人だけのようだ。
いくらイケメンでも協力的ではない男はモテない。
奴等二人を俺は鼻で笑いながら、料理と飲み物をせっせと運んで行く。ジサンとバサンが手伝いに来た俺達にお礼を言って来る。
モテるモテないに関わらず、人の役に立つ事をするのも悪くないな。
感謝された事に俺は嬉しくなり、リビングの八人掛けのテーブルに料理と飲み物をノリノリで置いて行く。手伝いに来た他の人間も、笑顔でそれに応えている。
「そんなもん、あのジジイとババアにやらせとけばいいんだよ。俺達は客だぜ。俺達は合コンをしに来てんだ。早く席に座って始めようぜ」
踏ん反り返って席に座っているベルンが、手伝いをしているメンバーに不満を漏らしている。手伝いをしている者達は俺も含め、不快な気持ちをあらわにする。
「スミマセン、皆さん。私の提案に乗って頂きありがとうございます。助かります」
アイシアが料理と飲み物を運びながら、お礼を言っている。みな、そんなの当然ですよと、笑顔で言葉を返している。
「サークさんもありがとうございます。手伝いに来てくれて、スゴく嬉しかったです」
アイシアは俺の目を見つめ、声を掛けて来る。
「いえ、俺も当然だと思ってたんで」
少し照れながら俺も返す。
作戦大成功。俺の好感度が上がっている。イケル、今回の合コン、イケルぞ。彼女を今度こそゲットだぜ。
俺は笑いを噛み殺しながら、周りを確認する。どうやら、全員に料理と飲み物が行き渡ったようだ。八人掛けのテーブルに、料理と飲み物が所狭しと並べられた。
八人全員が再び席に着く。目の前に置かれた料理と飲み物を確認しながら、各々、合コンメンバーの表情を見回す。
俺はぶどうジュースが入ったグラスを手に取り、乾杯の音頭を取る。
「それでは、皆さんの目の前に料理と飲み物が準備出来たようなので、乾杯をしましょう。グラスを持って下さい」
俺のその声に反応して、全員が飲み物の入ったグラスを手に取る。グラスの中身は各々違うようだ。ほとんどの人間が酒を手にしている。
合コンの席で酒を飲んで、やらかした経験が俺にはある為に酒は飲まない。そんな昔の事を少し思い出し、俺は再び口を開く。
「では、乾杯」
俺は正面に座っているアイシアとグラスをぶつける。笑顔の俺とは対照的に、彼女はクールな顔をしている。
まだ、緊張をしてるのかな? ならば、俺が徐々にトークでその心を和らげてみせますよ。
俺はそんな事を妄想しながら、今回の合コンを分析する。
俺が今回の合コンで狙いを定めるのは、やはりAランクのアイシアとエミノールだ。しかし、お色気ムンムン、エロエロ姉さんのエミノールに食い付くのは、少し抵抗がある。
と言う事で、俺はアイシアを攻める事にする。Bランクのレミカは、クルスのお気に入りだ。仲間と同じ女性の取り合いは望ましくない。
だから、今回はアイシア単独狙いだ。
俺は今回の自分の方向性をそう定める。
そして、他の人間が誰を狙い、どう動くのか推測するのも合コンでは重要だ。
ライバルのベルンとマルノオが誰を狙い、どう攻めて来るのか、俺は注意を払う為に奴等二人をチラリと観察をする。
すると、左隣にいるベルンが突然口を抑え出し、暴れ出す。そして、椅子から転がり落ちるように床に倒れ込む。
何だよ、料理を詰め込み過ぎて、喉を詰まらせたのかよ。カッコ悪い奴だな。
俺は倒れたベルンを蔑んだ目で見下ろす。
「ベルンさん、大丈夫ですか? 意識はありますか? サークさん、何か様子がおかしいですよ」
クルスが倒れたベルンの元に駆け寄る。そして、ベルンの不調の原因を突き止める為に、ベルンの身体の状態を確かめている。
「スミマセン、この中に回復魔法の使える方はいますか?」
クルスはベルンを抱えながら、必死に叫んでいる。
「はい、私、僧侶で回復魔法が使えます」
レミカが手を上げ、クルスの所へ走って来る。
「レミカさん、お願いします。呼吸が止まり掛けています。早く」
クルスはそう言うと、レミカと場所を交代する。レミカは状況を察知し、すぐさま回復魔法をベルンに掛けて行く。
残りの者達は、ただ呆然とその様子を心配そうに見ている。レミカは必死で、ベルンに回復魔法を掛けている。しかし、しばらくすると途中で手を止め、うなだれ始める。そして、こちらを向き、暗い表情を見せ、口を開く。
「スミマセン、助けられませんでした。ベルンさんは亡くなりました……」
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