第4話 女の子が食い付く趣味の話
しばらくして、いよいよランチの時間となる。
決戦の合コン場所は、建物の一階のリビングだ。この広いリビングの中央に、八人掛けの大きなテーブルがある。隣りは台所となっており、料理をすぐに提供出来るような作りになっている。
男メンバー四人は、すでにテーブルに着席している。台所側のテーブルに、横一列できれいに座っている。そして、窓側の一列に座るはずの女性メンバー四人をドキドキしながら待っている。
ちなみに席順は、向かって左側から、クルス、俺、イケメン勇者、鉄仮面の順番だ。
今回も、俺は中央寄りの席を陣取る。隣りのイケメン勇者に負けねぇ。そんな事を考えていたら、女性メンバー、四人全員が階段から順番に降りて来た。
先頭は、さっきのガッチリ体格の女の子だ。続いて、露出度の高い服を着ている魔法使い風の女の子だ。かなりのセクシー美女だ。
続いて降りて来たのは、先ほど中庭で剣を振っていた美女剣士だ。そして最後に出て来たのは、ショートヘアの初々しい感じの女の子だ。この子もかなりカワイイ。
フッ、漁師のおっさんよ。確かに今回の合コン、当たりだぜ。おっさんの事、悪く思ってすまなかったな。
この島まで船で送り届けてくれた漁師のおっさんの顔を思い出し、心の中で詫びる。そして改めて、俺は重要事項を確認する。
それは、今回の合コンは通常ではない。お泊り合コンなのだ。しかも、美女が多い。
俺は興奮し過ぎて、ぶっ倒れそうになる。でも、意識を奮い立たせ、深呼吸をし、冷静さを取り戻す。
そんな中、女の子達が席に座って行く。席順は、初々しい子、美女剣士、セクシー姉さん、ガッチリの順だ。
整理してみると、クルスの前に初々しい子が座り、俺の正面に美女剣士が座っている。イケメン勇者の前に、セクシー美女、鉄仮面の前にガッチリが座るという図式になった。
と言うことは、俺の正面、斜め前は全てカワイイ女の子が座っているのだ。まさに天国と、俺は幸せを噛み締める。
そして、ここでも俺は合コンの司会役を買って出ることにした。もちろん、女の子にモテる為だ。
ジサンがみんなから飲み物の注文を聞いている。俺はブドウジュースを注文し、話をゆっくりと切り出す。
「では、皆さん揃った所で、自己紹介とか始めませんか? まだ飲み物と食事が来ていませんが、それまでの間、少しでもお互いの事を知れれば良いと思うんで、どうでしょうか?」
俺はみんなの顔を確認する。全員、肯定的に聞いてくれている。態度の悪いイケメン勇者もだ。
全員の了承を得たと思って、俺は話を進めて行く。
「それでは皆さん、オッケーと言う事でよろしいでしょうか? では、まず男性陣から自己紹介の方を始めていきましょうか? クルス君、トップバッターをお願い出来るかな?」
俺は隣にいるクルスに、突然な話を持っていく。クルスは一瞬、驚いた表情を見せたが、俺のお決まりパターンなので、仕方ないですねと言う顔をする。そして、しぶしぶ自己紹介を始める。
「は、初めまして。僕の名前はクルスと言います。魔法使いをやっています。レベルは中級者くらいです。もし、パーティーに魔法使いが居られないなら、気軽にお声掛けして下さい。お力になります。よろしくお願いします」
クルスは丁寧にお辞儀した後、周りの顔を伺っている。かなり緊張したような顔をしているが、見事にやり切ったという表情をしている。向かいの席の女の子達も温かく、クルスを見てくれている。
うむ、なかなかの自己紹介だったぞ。お前も成長したな。
愛弟子の成長ぶりを、俺はウンウンと頷きながら見守っている。しかし、ここでハッと我に返り、俺は司会進行を続ける。
「ありがとうございました、クルス君。続いて、席の位置的に私の順番なので、私の自己紹介をここでしたいと思います。よろしいでしょうか?」
向かい側の女の子の反応を見ながら、俺は会話を進める。
「私の名前はサークと言います。剣士をやっています。レベルは一応、上級者クラスです。趣味は筋トレと料理です。よろしくお願いします」
俺は笑顔を見せ、軽く会釈をする。そして、女の子の反応を注意深く伺う。女の子達は全員微笑んでいる。なかなかの好感触のようだ。
ここでハッキリ言おう。
俺はそれほど料理は得意ではない。筋トレもそんなにしていない。では、なぜ俺がこれが趣味ですと言ったのか?
それは、筋トレと料理を趣味としている男は女の子にモテるからだ。
嘘は付いていない。週に五分くらいは、料理と筋トレをやっている気分はしている。
これはモテる為のデータなのだ。そして、戦略なのだ。決して卑怯ではないのだ。
「え、スゴーイ。男の人が料理なんて素敵ですね。サークさんって例えば、どんな料理を作るんですか?」
魔法使い風のセクシー美女が手を上げて、俺に質問して来る。興味津々の顔だ。
よし、食い付いた。狙い通りだ。やったぜ。
俺は爽やかな笑顔を見せて、その美女にスマートに応える。
「ハハハ、大した事はないですよ。ローストビーフとか作りますけどね」
「え、ホントですか? どうやって作るんですか? 私にも教えて下さいよ」
魔法使い風の美女が、こちらに顔を近付けて来る。そして、その子の胸の谷間がチラチラと俺の目に入って来る。
俺は興奮状態になり、呼吸が荒くなる。そして、頭が回らなくなり、思った事をつい無意識的に口にしてしまう。
「スイマセン。作った事がないんで、分からないです……」
俺は致命的な事を口にしてしまい、合コンの場を凍り付かせてしまった……。
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