第3話 男は立ち入り禁止だよ

 エロコンパ島の中央辺りに、三階建ての建物が見える。俺達、男メンバーはその場所を目指し、勇ましく歩き出す。


 なぜなら、その建物が合コン会場であり、宿泊施設になっている決戦の地だからだ。


 俺達、男四人は建物の中に足を踏み入れる。すると、年老いた二人の男女が微笑みながら、俺達を迎え入れてくれた。


「ようこそ、お出でくださいました。これから、三日間、皆様のお世話をさせて頂く、ジサンとバサンでございます。よろしくお願いします」


 二人の老人は俺達に丁寧に挨拶してくる。しかし、イケメン勇者と鉄仮面野郎は完全に二人を無視して、周りを見回している。


 クルスはそれを見て、気まずいと思ったようだ。老人達に気を使って、コミュニケーションを取り始める。


「こちらこそ、よろしくお願いします。お二人はもしかして、ご夫婦でこちらを任されているんですか?」


「そうなんですよ。ギルドの方から雇われて、こちらの方で夫婦で働かせて頂いております。お食事、洗濯、お掃除、何でも致しますので、困った事があれば遠慮なく私達に言って下さい」


「ありがとうございます。三日間、お世話になります。こちらこそ、よろしくお願いします」


 普段、あまり社交的ではないクルスが、頑張って初対面の人間と会話をしている。


 そんなクルスに俺は悪いなと思いながら、女の子達を探す。そして、他のいけ好かない男達同様、辺りをウロウロする。


「おい、ジジィ。他の女達はどこだ? どこにもいねぇぞ」


 金髪イケメンの勇者が、老紳士の方に詰め寄る。


「女性の方々は三階の割り当てられたお部屋に、各々休んでらっしゃるはずです。あ、ちなみに男性の方々のお部屋は二階に各自ありますので」


「いいんだよ、そんな事は。どうせ、女と一つの部屋に居る事になるんだしな、グヘヘ」


 イケメン勇者は、いやらしい笑みを浮かべ、階段を探し始める。


 ふざけるな。美女達は俺の物だぞ。俺も三階に行って、美女達のお部屋にお邪魔したいぞ。


 俺も負けじと、三階への階段を必死に探し始める。すると、イケメンの勇者とほぼ同時くらいに階段を発見する。俺と勇者は我先にと、階段を登ろうと必死で競い合う。


「あんた達、待ちな。三階は、男は立ち入り禁止だよ」


 女性の低い声が、俺達に向けられる。そして、その声の持ち主と思われる人間が、階段から降りて来る、そんな足音がする。


 おぉ、きっと合コンメンバーの女の子だ。


 俺は期待しながら、階段の上の方へ熱い視線を向ける。


 すると、短髪の体格のガッチリした女性が顔を出す。背中に剣を装備している。見るからに、勇者か戦士タイプだろうと、俺は分析する。彼女のルックスは正直、可もなく不可もなく、普通という感じだ。


 あの漁師のおっさん、女の子は全員美女ばかりだって言ってたのに、採点が甘過ぎるぞ。


 そんな事を思いながら、階段から降りて来た女の子を俺はじっと観察する。


「何で、男は三階に上がっちゃいけないんだ。いいから、そこをどけよ。邪魔だ」


 イケメン勇者は語気を強め、背中の剣を抜こうとする。


「暴力行為は合コン規約違反だよ。それとも、ここが孤島で合コン組織委員会の目が届かないから、規則を破ってもいいと思っているのかい?」


 女の子の方も、背中の剣に手を掛ける。イケメンの勇者は剣を抜き、身構える。場は一触即発の雰囲気となる。


「みなさん、止めて下さい。もう少し待って頂いたら、ランチの用意が出来ます。その時に、全員集合して、合コンが始まりますので、もうしばらくお待ち下さい」


 世話係のジサンがイケメン勇者を一生懸命なだめている。イケメン勇者も、少し待てば全員顔を揃えると言う事に納得し、剣を収める。


「ケッ、こんなクソ女じゃなくて、早くいい女に会いたいぜ」


 イケメン勇者はそう言うと、鉄仮面の男と共に建物の外へと出て行く。勇者風の女の子も、怒ったような顔で、階段をまた登って行く。


「ランチの時間まで、自室で休まれますか?」


 ジサンが申し訳なさそうな顔で、俺とクルスに近寄って来る。


「そうだな、部屋を見ておきたいから、案内してくれ」


 俺がそう応えると、ジサンは俺とクルスの荷物を持って、階段を登り始める。俺とクルスも、ジサンの後に続き、階段を登って行く。


 二階の廊下に着くと、ドアが五つほど見える。と言うことは、二階には五部屋あるのか。二階の様子と、二階の窓から見える景色を確認しながら、俺はジサンに付いて行く。


「各お部屋のドアに宿泊されるお客様のネームプレートを付けさせて頂きました。こちらが鍵になっております」


 ジサンは鍵を取り出して、俺とクルスに一つずつ鍵を渡す。自分の部屋はどこかと、俺は自分の名の書かれたネームプレートを探す。


 しばらく見て行くと、"サーク"と書かれたネームプレートを発見する。どうやら、一番奥の部屋のようだ。俺はその部屋の鍵穴に鍵を差し込み、ドアを開ける。


 部屋に入ると、右隅にベッド、左側に机と椅子が置かれていた。


 ホントに何もない部屋だな、俺はそう思いながら、窓から外の景色を見下ろす。二階のこの部屋からは海が一望出来る。


 綺麗だ、いい眺めだ。


 そんな風に、ガラにもない事を思う。


 ふと、手前の景色に目をやると、この建物の中庭らしき広場が見える。そこで、俺は人影を発見する。鎧を着た戦士風の人物だ。


 その人物は、剣を必死に振っている。剣の稽古をしているみたいだ。しかも、よく見れば女の子のようだ。


 さっきの女勇者か? 合コン会場まで来て、剣の稽古か? 頑張り過ぎだろ?


 そんな風に思って、俺はもう一度、ボーッと女の子を見てみる。


 いや、違う。さっきの女の子ではない。美女だ。初めて見る美女だ。


 綺麗だ、いい眺めだ。


 俺はそう思って、美女の剣の素振りを二階からじっと見ていた。




 






 










  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る